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乳房が張るような感じがあり、ホルモン補充療法(HRT)をやめてしまいました。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 乳房が張るような感じがあり、ホルモン補充療法(HRT)をやめてしまいました。

ホットフラッシュがひどく、婦人科でHRTを始めました。すぐに症状はおさまったのですが、乳房が張るのが気になって2カ月でやめてしまい、それ以来、婦人科にも行かなくなっています。やめたとたん、ホットフラッシュは再発しています。乳がんの検診は、HRT開始前に婦人科で受けて問題なし。それまでも、2年に1回の検診は受けていました。閉経はまだですが、月経は間遠になっています。(F・Rさん 48歳 会社員)

A. 症状が落ち着くよう医師と相談して調整することができます。

野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

月経周期ごとに乳房が張ること、F・Rさんは今までも経験したことはありませんでしたか。エストロゲン分泌が減少すると、そういった症状はなくなりますが、HRTを始めると、補充するエストロゲンの影響で、乳房が張ったり痛んだり、吐き気を覚えたりすることがあります。驚いて「先生、大丈夫でしょうか」と質問する方もいらっしゃいますが、ほとんどはHRTを続けるうちに1、2カ月で不快症状はなくなっていきます。どうしても気になる場合は、補充するホルモン量を減らすなど調整することができます。

F・Rさん、自己判断で治療を中断したからといって、HRTの再開をためらう必要はありません。「ホットフラッシュがつらいので再開したい」「乳房痛を軽くするにはどうしたらいいのか」と質問して、納得いくまでご相談なさることです。コミュニケーションは、医師との信頼関係のカギでもあります。

表のように、HRTの主な製剤には、飲み薬、貼り薬、塗り薬の3つがあって、エストロゲンの種類も少しずつ違います。錠剤の数や、塗る分量を加減するなど、調整方法はいろいろ。経皮吸収は肝臓に負担をかけにくいので、最近では好む人が増えてきました。

【主なエストロゲン製剤】
【主なエストロゲン製剤】
【エストロゲン・黄体ホルモン配合剤】現在、日本国内で使われている主なHRTの製剤を紹介。自分が何を処方されているのか知れば、医師とのコミュニケーションもとりやすくなる。
【エストロゲン・黄体ホルモン配合剤】現在、日本国内で使われている主なHRTの製剤を紹介。自分が何を処方されているのか知れば、医師とのコミュニケーションもとりやすくなる。

通常は、エストロゲンを補充しつつ、12日間は黄体ホルモンを服用、消退出血を起こさせます(周期的併用投与法)。月経は面倒という人は、エストロゲンと黄体ホルモンを持続的に服用することで出血を起こさせない方法をとります(持続的併用投与法)。

量にしろ、服薬方法にしろ、F・Rさんの体質、体調、ライフスタイル、好みで選べますが、一点だけお願いしたいのは、休止する場合は医師と相談し、体調を整えながらにしてほしいということ。急激な体調悪化を防ぐ目的もありますが、血管や骨密度などの状態をチェックしつつ、閉経後の人生を見据えた上で検討する視点が必要だからです。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

オーダーメイドのように、HRTは調整可能。(Dr.野末)

乳房が張るような感じがあり、ホルモン補充療法(HRT)をやめてしまいました。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

※表は『ホルモン補充療法(HRT)がよくわかるQ&Aハンドブック2019』(NPO法人 女性の健康とメノポーズ協会)より抜粋。

『クロワッサン』1022号より

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