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医師に聞く、骨粗鬆症のリスクや検査方法、未来のための「骨活」プログラム。

骨折しやすくなる骨粗鬆症の症状は、早ければ40代、50代から出現。早期の予防と対策が明るい未来を作ります。
  • 撮影・黒川ひろみ イラストレーション・中島陽子 文・小沢緑子

【簡単だから今すぐ始めよう!未来のための「骨活」プログラム。】

骨粗鬆症のリスクを知る。

「今、50代以降の女性の4人に1人が骨粗鬆症といわれています。放っておくと背中が丸く曲がったり、よろめいて手をつく、足をぶつけるなど、些細なことでも骨折しやすくなります」と、整形外科専門医の伊藤薫子さん。

加齢により男女とも骨密度(骨を構成するカルシウムなどの量)は低下するが、「女性に骨粗鬆症が多い原因は、女性ホルモンの減少にあります」。

実は骨にも新陳代謝があり、古くなった骨を壊す「骨吸収」と、新しい骨を作る「骨形成」を繰り返している。

「この『骨形成』を女性ホルモンのエストロゲンが促しています。そのため分泌量がガクッと減る更年期以降、骨形成の速度が骨吸収に追いつかず、骨粗鬆症が起きやすくなるのです」

●骨量の経年的変化

女性ホルモンの分泌が多い20〜30代は「骨吸収」と「骨形成」のバランスがとれ、骨量(骨密度)は最大に。閉経後は骨形成を促す女性ホルモンが減少しバランスが崩れるため、骨吸収が進行し、骨量が低下する。出典:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」

発症しやすい人の傾向とは?

「骨粗鬆症は加齢や女性ホルモンの減少のほかにも、食事からのカルシウム摂取不足、運動不足も原因。痩せ型だったり、過去に極端なダイエットをしたことがある人も注意が必要です」

日常生活においては、1日3杯以上お酒を飲む習慣があるとアルコールの利尿作用で必要なカルシウムが体外に排出されやすい。喫煙も体へのカルシウム吸収を阻害するので気をつけたい。

「また、遺伝的な要因も大きく、母親が骨粗鬆症、あるいは母親か父親が大腿骨(脚の付け根から太ももの骨)の骨折をしたことがある人はなりやすい傾向があります。ほかにも40歳未満で早期閉経、婦人科系の病気で半年以上月経を止める治療をしたことがある人も発症リスクは高くなります」

自覚症状はないので要注意。

「骨粗鬆症で一番注意してほしいのが、初期段階では違和感や痛みなどの自覚症状がほとんどないことです」

骨がもろくなると骨折しやすくなるほかにも、中腰で重いものを持つなど、日常の動作が原因で“いつの間にか骨折(圧迫骨折)”のリスクも。

「圧迫骨折はほぼ痛みがなく、気づかないことが。ですが、骨が1つつぶれると2つ目、3つ目とドミノ倒しのように連鎖し、背中が丸く曲がるなど見た目にも影響。若い頃より身長が1〜
2センチ低くなったと感じたら、進行している可能性が大きいです」

前述した発症しやすい人の傾向と併せ、骨粗鬆症のリスクチェックができる簡単な表が下記。当てはまる項目があるか、まずはチェックを。

●骨粗鬆症リスクチェック
作成:かおるこ Happy クリニック

□ 洗濯物を高いところに干せなくなった。
□ ちょっとした段差などで、転びやすくなった。
□ ふと鏡にうつった自分の背中が丸いと感じた。
□ 背中や腰に痛みがある。
□ 糖尿病や慢性腎臓病と診断されたことがある。
□ 消化器系の手術を受けたことがある。
□ 関節リウマチや副甲状腺機能亢進症と診断されたことがある。
□ ステロイド薬を使用している。
□ 閉経を迎えた。
□ どちらかというと痩せ型。
□ 喫煙、飲酒の習慣がある。

日常的な動作における項目は、骨密度とともに体の筋力やバランスを保つ力が低下することも原因。ほかにも骨密度を減少させる病気や薬、生活習慣なども発症リスクになる。

骨密度検査のすすめ。

骨粗鬆症と診断されたら治療は薬の服用を中心に行うが、「発見が遅くなるほど治療や予防のための選択肢が少なくなります。自覚症状がないだけに骨粗鬆症は早期発見と予防が何よりも大事。40歳になったら一度骨密度検査をし、さらに閉経後から2〜3年は骨密度が特に減少しやすいため、年に一度検査することを強くおすすめします」。

骨密度検査は自治体によっては公的検診を実施。もしくは人間ドックのオプション、検査機器のある整形外科など民間医療機関でも受けられる。

「今の骨の状態を知ったうえで、食事の改善や運動など、日常の中で意識的に“骨活(ほねかつ)”を。続ければ更年期以降の骨密度の低下を抑えることもできます」

次で、簡単な骨活運動も紹介。

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