レスキューナースに学ぶ、出先で起こる急なめまいや立ちくらみの対処法
イラストレーション・小林マキ 構成&文・板倉みきこ
出先の不調の中でも、めまいや立ちくらみは要注意。意識を失って頭から倒れてしまえば、頭部へダメージが及び、一大事となる。
「私が、駅やエレベーター付近などで倒れた女性を助けたのは、1カ月で10人はくだらないほど。日常茶飯事の出来事です」(国際災害レスキューナース・辻直美さん)
倒れる人に共通するのが、体調が少しおかしいかも、というサインを見逃してしまうこと。
「若い頃に体力があったり、健康だった人ほどその傾向があり、倒れるまで放置しがち。頭痛がしたり、呼吸が荒い程度の少しの変化にも、更年期以降は立ち止まって様子を見ましょう。また、一般の人は倒れた人に何をしたらいいか知識がないので、即座に対応できないのも事実。自分が倒れて意識がなくなっても、周囲にすぐに助けてはもらえない可能性もあります。自分のカラダは自分で守る、その基本を忘れないでください」
それでは不調時にどう対応すべきか、具体的に学んでいこう。
最悪の事態を防ぐ、基本の3ステップ
【STEP 1】安全な姿勢をとれる場所で、しゃがむor座る
のぼせやふらつきなど、倒れる手前のサインを見逃さずに立ち止まる。安全にしゃがんだり座れそうな場所に移動し、ゆっくりしゃがむ。もし横になれる場所があればなお良し。脚を高くして横になると、脳への血流が促進され、症状が改善しやすい。その際は、呼吸しやすくカラダの負担も軽減される横向き寝(半腹臥位)がおすすめ。
【STEP 2】呼吸をゆっくり3回繰り返し、水を少しずつ飲む
しゃがんだり座れたら、呼吸で心身を整える。ただ、いきなり吸うと過呼吸になる可能性が高いので、まずは吐くこと。ゆっくり吐いてから、その後吸う。3〜5回呼吸を繰り返すと少し落ち着いてくる。血圧が低下しているので、水か経口補水液をゆっくり飲む。一気に飲まず、体調の変化を確認しながら少しずつ飲むのがポイント。
【STEP 3】症状が治まったら、ゆっくり立ち上がりその場で10分待つ
症状が治まってもすぐ移動しない。ゆっくり立ち上がり、その場で10分ほど様子を見る。同時に、不調が起こった原因を考える。水分不足や睡眠不足、空腹、疲労、薬の副作用やストレスなど。原因を知ると今何をすべきかが分かる。たとえ調子が良くなっても、その日の用事はキャンセルして静養を。健康診断も早めに受けたい。
こんな場所では? 状況別の対応の仕方
続いては人混みや階段、運転中などの状況別に対応法を聞いた。
「その場で少し症状が落ち着いても、ろれつが回らない、何度も吐く、手足が痺れる、めまいが何時間も続くなどの症状があれば、すぐ医療機関に行ってください」
【人混み】
2次被害を避けるため、まずは人の流れから外れること。壁際、店舗の脇などしゃがめそうな場所へ移動する。立ち上がってまたふらつく可能性があるので、体調が落ち着くまでは絶対にその場を動かない。
【トイレの個室】
立ち上がらないで便座に座ったままで様子を見る。助けが必要な場合でも、気持ちが悪いと声が出ないし、ドアを叩く力もないので、非常ボタンを押すことをためらわないで。災害用の防災笛もこういうときに役立つ。
【階段、エスカレーター】
手すりを掴んで立ち止まり、壁に寄りかかる。立っていられないならしゃがむ。エスカレーターの場合は降りてすぐ傍らに移動し、他の利用者とぶつからないようにする。階段はできれば踊り場に移動し、座れるスペースを確保。
【温泉、サウナ】
不調を感じたら湯船やサウナから出て、ゆっくり脱衣所などへ移動。涼しい場所で安静を保つ。火照ったカラダを冷やそうと水風呂に入ると、心筋梗塞になる危険があるので厳禁。体調が落ち着いたら水を1杯飲み、再入浴はしない。
【運転中】
道の脇に停車し、必ずハザードランプを点灯。窓を閉め切っていると、意識を失ったときにロックがかかっていて、外から開けられないので、窓は開けておく。体調が復活しても運転を再開せず、ロードサービスか家族を呼ぶ。
カラダの緊急事態にも、災害時にも役立つもの
辻さんが従事するレスキューナースとは、地震・台風などの大規模災害や事件・事故などの現場に駆けつけ、救命救急や医療支援を行う専門的な看護師のこと。日頃から緊急事態に備え、様々なアイテムを持ち歩いているが、その中から、更年期の体調不良対策にも役立ちそうなものを教えてもらった。
「嘔吐や不意の経血、尿もれなど、更年期には今までと違う体調の変化で、想定外の事態が起こります。でも、対処できるアイテムを常に持っていれば安心です。落ち込むのではなく、カラダの変化を受け入れ、今の自分に必要なものは何かを考えて備えておきましょう」
更年期ケアに持っておくといいものだけでなく、災害時を考慮した場合、加えておくといいおすすめアイテムも列記。参考にしたい。
〈持っておくといいもの〉
■塩分タブレット
大量に汗をかいたとき、なんとなくフラッとするときに舐めてミネラル補給。塩分摂取量が気になる、高血圧や腎臓病の人は医師に確認を。
■手ぬぐい
万能アイテム。たっぷりと水に濡らして首を冷やしたり、不意の経血には生理ナプキンの代わりになる。濡れてもすぐ乾くのが利点。
■レジ袋
気分が悪くなっても地べたに座りにくい場所がある。そんなときはレジ袋を敷けばいい。汚れたものを入れたり、嘔吐袋としても使える。
■ペットシート
350ml程度は吸収するペットシート。レジ袋の中に入れておけば、嘔吐する際も安心。水を含ませると冷たくなり、のぼせ対応にも向く。
■小さなお菓子
食が進まない人は、低血糖で倒れやすい。出先でも口にしやすい飴やビスケットなどで低血糖を予防。糖尿病の人は医師に確認を。
〈そのほかにも……〉
■ウエットティッシュ
■紙石鹼
■チャック付き保存袋や消臭袋
■緊急連絡先や医療情報が書かれたもの
■モバイルバッテリー
■携帯の扇風機や扇子
■ハッカ油スプレー
■常備薬
「緊急事態に連絡を取りたくてもスマホの充電がない、連絡先が分からない」なんてことがないようバッテリーや連絡先は必携。紙石鹼や保存袋は汚れ物対策に。気付け薬にもなるハッカ油は、辻さんのお気に入り。
『クロワッサン』1175号より
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