受けられる支援にすぐ繋がる、認知症介護制度の基礎知識
イラストレーション・佐々木一澄 文・小沢緑子
突然始まる介護。さらに親が認知症と判定(※1)されたら、今後どう介護すればよいか戸惑う人は多いだろう。
「高齢者の介護で『どうしてよいかわからない』ときの駆け込み場所として、親が住む市区町村にある地域包括支援センター(※2)を覚えておきましょう。ここでは主任ケアマネジャー、保健師、社会福祉士、生活支援コーディネーターなどの専門職(※3)が知識を活かし、地域の高齢者の生活や介護を支えています。ここからスタートを」と、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。
今回、親が認知症と判定されてから介護保険(※4)を申請しサービス開始までの流れと、親と離れて暮らしている場合の遠距離介護のポイントも紹介。
「さらに大切なことは、兄弟姉妹がいたら介護は皆で協力して行うこと。介護は1〜2年で終わるとは限らず、10年単位で続く場合もあります。早急に家族会議を開き、それぞれの役割分担や介護費用についても話し合いを」
介護サービスは時代とともに進化していて、「公的機関を活用し、ひとりで抱え込まないことが肝要です」。
1 地域包括支援センターに相談
地域包括支援センターがどこにあるのか迷ったら、「親の居住地域の役所のHPで調べたり、役所に電話をすれば教えてくれます。窓口は混雑していることもあるので、いきなり行くよりまずは電話で問い合わせて予約を」。
実際に相談できる内容は?
「一番大切なのは『今、自分や親が生活で困っていることや、心配事を話す』こと。その上で『今後どういう支援を受けられるか』を相談。突然のことで何も知識がなくても、相手は慣れたプロ。今の親や自分の状態をありのままに話せば、適切に対応してくれます」
支援や介護が必要な場合は、次の介護保険の申請に進むが、「地域包括支援センターでは申請の手続きもサポートしてくれます」。
【 相談できること 】
◉生活で困っていること、心配なこと
◉介護保険の申請のサポート、および代行
◉市区町村の助成制度の案内 など
遠距離の場合は…
親が居住する自治体の地域包括支援センターに相談。遠方なら電話で手続きも。
介護サービスの活用で認知症の親の独居も可能。
親と離れて遠方に住んでいる場合も慌てずに。「基本的に子がどこに住んでいても地域の包括センターが対応、相談にのってくれます。慌てて離職や同居をしないこと」と太田さん。「近年は抗認知症薬の効果で症状が安定する人が増え、親が認知症でも遠距離介護をするケースは多い」という。たとえば親がひとり暮らしなら、食事の宅配サービス、GPS見守り端末などのIoT機器の活用、ほかにも自治体の緊急通報システムの利用(※5)なども一案。「介護保険のサービスは要支援なら地域包括支援センター、要介護ならケアプランを作成するケアマネジャーとじっくり話し合いましょう。よりよい方法を検討してくれます」
親と一緒にやっておくこと
【 大事なことを聞いておく 】
◉携帯のロック解除法
◉晩年をどこで過ごしたいか
◉ネット証券や口座の確認
◉免許返納のすすめ
家族会議以前に親本人が判断能力のあるうちに聞くべきことが上記。「晩年の希望、免許返納のほか、認知症が進むと銀行や証券会社の口座は凍結されて家族も資金を動かせないので、特にお金事情は確認」。個人情報が詰まったスマホのロック解除法も聞いて。
【 親のお金を確認 】
◉預貯金(キャッシュカード暗証番号)
◉各種保険
◉年金
「親の介護費用は、親のお金を充てるのが基本。親に確認して兄弟姉妹間で共有」。預貯金はいざというときに引き出せるよう普通口座にまとめておく。また金融機関によっては代理人を指定、2枚目の代理人用キャッシュカードを作ることもできるので準備を。
子どもだけでやっておくこと
【 介護の分担を決める 】
家族会議で重要なのが、役割分担を決めること。「全員で介護をする態勢を整えるのが長続きのコツで、向き不向きもあるので分担を。特に大事なのがキーパーソン(※6)。家族間の意見を調整し、医療や介護のプロとの窓口となる大事な役割を担います」
【 介護家計簿を作る 】
家族間でもお金の管理は明確にしないと揉めごとの種に。「介護家計簿(※7)を作り、親の介護にかかった費用の内訳を記録。家族の中で遠くから介護に通う人がいれば、交通費も積み重なると大きな負担。介護の経費として交通費も計上し、そこから出しましょう」
2 介護保険の申請をする
介護保険の申請手続きは、本来は親が居住する市区町村の窓口で家族や親本人が申請を行うが、「仕事などで都合がつかなかったり、遠方で出向けない場合、この段階ではまだ書類上の手続きなので家族が立ち会えなくても何とかなります。代行申請(※8)というものがあり、地域包括支援センターにお願いすることができます」。
遠距離の場合は…
介護保険の申請は包括センターによる代行申請ができる。
3 訪問調査を受ける
次は市区町村の職員などが親元を訪問し、本人に状態を聞く。
「この認定調査(※9)は必ず家族が立ち会いを。たいていの親は調査員の質問にはシャキッとした態度で、何でも『できます』と答える傾向に。親が事実と違うことを言ったら、『実はこういうことで困っています』と伝えて特記事項(※10)として書き添えてもらいます。あらかじめ困りごとをメモ書きしておくと焦らず伝えられます」
【 調査の質問例 】
◉自分の生年月日が言えますか
◉直前のことを思い出せますか
◉今の季節がわかりますか
◉外出すると1 人で帰れないことがありますか
◉物を盗られたなど被害的になることがありますか など
遠距離の場合は…
遠方であっても、認定調査は必ず立ち会おう。
4 認定結果が届く
認定結果(※11)は原則30日以内に郵送で通知され、その区分が下表。
「認知症の場合、体が元気で生活に支障がないと要介護度が低めに認定されることが。認定結果が低ければ必要な介護サービスが受けられなくなりますし、高すぎると、同じサービスを受けても1カ月にかかる利用料の自己負担額(原則は利用料の1~3割)が増える。『適正』に判断してもらうことが重要です」
認定結果に不服があれば、調査をやり直す区分変更(※12)の申請ができる。
「調査をやり直した後、通常1カ月くらいで結果が出ます」。申請からサービス開始までにかかる日数は40日程度。緊急の場合は前倒しして暫定サービス(※13)として受けることもできる。
“要支援”の場合は
【 地域包括支援センターに連絡 】
↓
【 ケアプランを作成する 】
要介護度の低い要支援1・2の場合は、地域包括支援センターの職員などが担当し、悪化防止や改善に重点を置いたケアプラン(※14)を作成する。たとえば訪問型は家事などの生活支援や健康維持のためのサービス、通所型は食事の提供や入浴介護などの日常生活の支援や機能訓練なども。もし認定結果に不満がある場合は、同センターに相談して区分変更の申請ができる。
↓
【 サービス開始 】
“要介護”の場合は
【 ケアマネジャーをみつける 】
要介護1~5の場合は、在宅での介護サービスの利用ができる。まずは自宅で介護を受ける親とその家族をサポートしてくれるケアマネジャーを探そう。ケアマネジャーは市区町村から指定を受けた「居宅介護支援事業所」に所属。事業所のリストは地域包括支援センターなどで入手でき、自分で選ぶことが可能。実際の選び方は介護する家族が連絡をとったときの応対、何かあったときのために親の自宅からの距離、医療連携などを比較して選ぶのがよい。
↓
【 ケアマネジャーと契約 】
居宅介護支援事業所を決めたら、そこに所属している福祉や医療の有資格者・ケアマネジャーと面談をする。担当ケアマネジャー(※15)選びでは相性も大切。親はもちろん、介護する家族が相談しやすいかどうかも重要。顔合わせで親の自宅に来てもらうときに、「普段から不安に思っていること」「日常生活でのささいな気づき」なども積極的に話して選定を。なお、担当ケアマネジャーは後から変更することも可能。
↓
【 ケアプランを作成する 】
契約後、担当ケアマネジャーは利用者の状況に合わせて「いつどこで、どのくらい」の介護保険サービスを利用するかのケアプランを作成。さらに利用者とサービスを提供する事業者間の手配や調整、また介護サービスの利用料の管理なども行う。月1回は利用者の状況に変化がないかなどの状況把握や評価のため、親の自宅を訪問してくれるが、相談したいことが生じたときのために担当ケアマネジャーとは常に連絡がとれるようにしておこう。
↓
【 サービス開始 】
広告