【新連載・ポケットからごほうび #1】うちのネルさんと、今日のサムズアップ──西田尚美さんの心を動かす日々の出来事
文・西田尚美 イラストレーション・qp
うちのネルさんと、今日のサムズアップ
最近ちょっとうれしかったことがあった。
今ドラマのロケで2週間ほど東京を離れている。こんなに長いロケは久しぶり。うちには、白い「ネル」という名の犬がいる。犬種はウエストハイランドホワイトテリアというとても長い名前で、愛称ウエスティーと呼ばれている犬だ。現在7歳の女の子。親バカかもしれないけど、本当にうちのネルさんはかわいい。愛嬌があって、ちょっとドジっ子のところもあって。はい、親バカ決定。いいじゃないの、好きなんだから。
ネルさんは寂しいと時々いじけて手足を舐めたりするので、留守をする時はネルさんのことがとても気になる。家族はちゃんとお散歩に連れて行ってくれているだろうか、ご飯をちゃんとあげてくれているだろうか、ペットシーツの交換はしてくれてるかな……。何よりネルのそばにいてくれているかな。少し不安はあるけど、まぁ家族のグループLINEで何かあれば共有出来るし、時々写真や動画を見せてもらえば安心出来る。
そして、ロケ2日目に早速ネルさんの写真が送られてきた。ネルさんがいつものように「待て」からの「よし!」の合図でご飯を食べている動画と、最近届いたリネンの素敵なドッグベッドの上でくつろいでいる写真。それを見て、安心するのと同時に「あれ?」と気づいたことがあった。
一つは、食事の時にいつもフードをあげる器のとなりにお水の器があるのに、それがなかったこと。もう一つは、くつろいでいるネルさんの目に、目やにがついて涙やけのように見えたこと。私は家族に対して言葉が喉から溢れ出しそうだった。家族LINEに「かわいいね、ネルさん。ありがとう。」その後、「あのさ、お水ちゃんと飲んでるかな」と書いて消した。気になったけど、それは言わなくて良い気がした。ご飯をあげてる時にお水の器を洗ってくれていたのかもしれない。目やにも、いつも私が拭き取っているけど人によっては気にならないのかもしれない。先にこちらが言葉にするよりも、もう少し見守ってからにしようと思った。
そしたら、「涙やけ、ちゃんと取ってあげて」「お水もちゃんと入れ替えてあげてね」とそれぞれの動画に対して、子どもが書いてきて驚いた。気づかないで見過ごしてしまうことも多々ある中、ネルさんのことをちゃんと見てくれて発言してくれたことが何よりもうれしかった。
私が言っていたら角が立ったかもしれない言葉は、子どもが言うことでサムズアップに変わった。
『クロワッサン』1173号より
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