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【器好きのいつもの食卓】こつこつ集めた作家ものの器に刻まれる家族の歴史。

  • 撮影・徳永 彩 文・嶌 陽子

食事をしながら、子どもたちと器の話になることも。

山﨑さん夫妻が結婚してすぐに買った古い水屋箪笥。「ガラスの引き戸の“田の字”形に惹かれて」と瑞弥さん。下の引き出しには季節柄、使わない器などをしまっている。

山﨑家にある2つの大きな食器棚は、テーブルを取り囲むような形で、ダイニングスペースに置かれている。

「動線や使い勝手を考えるなら、台所に置いたほうが便利なんでしょうね。でも、私は好きな器をいつも眺めていたいので。もうひとつの理由は、“食”を家族の生活の中心に据えたかったから。食まわりのものを、台所だけに閉じ込めたくなかったんです」

食器棚の中は、器の置き場所をざっくりと決めておくだけ。毎日、家族の誰かが交代でしまうので、少しずつ位置が変わっているのが日常だ。家族みんなが、それぞれの流儀で、器と共に日々を過ごしている。

「食事の最中に、子どもが『ポテトサラダ、前はあのお皿に入ってたけど、今日はこのお皿なんだね』なんて言ってきたりします。ギャラリーにも家族全員で行きますよ。器そのものより、家族と一緒に買ったり使ったりすることが、私には大事なんです」

おやつなどによく作るという桜えびと春菊のおむすびは、林拓児作の大皿に。細かい貫入が美しい。

初めて使ったその日に、息子が歯形をつけてしまった漆椀。娘が初めてごはんを食べた茶碗。どの器にも、思い出があるという瑞弥さん。これからも毎日の食卓で、日々新たな家族の物語が刻まれていくのだろう。

「最近、小皿や取り皿はなるべく6枚揃えたいと思うようになりました。将来、息子と娘が家を出る時、私と夫の分の2枚を残して、それぞれに2枚ずつ渡したいなって。『あの時、皆で食べたごはんがおいしかったな』とか、『疲れてても頑張ってごはんを作ろうかな』とか。器と共に、家族の食卓の記憶を持っていって、時々心の支えにしてくれたらうれしいですね」

少しずつ増やしてきた、お気に入りの数々。

上・印判や染付など、日常使いできる骨董の器。稲穂が描かれた中皿、豊作の象徴・ふくら雀モチーフの小皿など、農家らしいセレクト。 下左・くまがいのぞみ作の耐熱皿。「ドリアやグラタンはいつもこれで作ります。子どもたちも喜んでくれるので」 下右・色合いの美しさが特徴的な、吉村和美作のスープボウルやプレート。「青いカップには、ヨーグルトやデザートがよく映えるんです」

山﨑瑞弥さん 山﨑 宏さん●「お米農家やまざき」として、茨城県にて家族で米作りをしている。著書に『お米やま家のまんぷくごはん』(主婦と生活社)。 http://www.okome-yamazaki.com 

『クロワッサン』959号より

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