帽子アトリエの一日は掃除に始まり、掃除に終わる。そこには帽子作りのプロならではの確たる理由がある。
「材料も道具も細かいものがたくさんあるので、仕事の後は床が惨憺たる状態になってしまうんです。座って作業することが多い縫い仕事ですから、待ち針を床に落とすことはしょっちゅう。画鋲とかも落ちているし、危ないので掃除機はかけられません」
と、アトリエアキコ代表の市瀬晶子さん。スタッフはそれぞれの作業机に繊維のほこりや糸くず、生地の毛などを払う小さな手箒は置いてあるが、床掃除用には長箒が4本。これを使って最後まで残っている人たちが床を掃き、待ち針を拾って仕事を終えるのが決まりだ。そして翌朝9時に再びスタッフ全員で掃除をして一日が始まる。
「待ち針は頭が付いているのでまだいいんです。いちばん危ないのは縫い針。これはそれぞれが管理して、使う数だけ出して、落ちたらすぐに拾います」