くらし

時空を超えて復活した物語を楽しむ。日本科学未来館『企画展「マンモス展」-その「生命」は蘇るのか-』

  • 文・嶌 陽子
「ユカギルマンモス」(頭部冷凍標本)/ 2005年に開催された『愛・地球博』で大人気を博した。本展ではかなり間近で見ることができ、大きく湾曲した牙の巨大さ、その迫力に興奮すること間違いなし。

大きな牙と長い鼻で知られ、古代に存在した巨大生物・マンモス。本展では、標本や模型で彼らの歴史をひもとくだけでなく、最新の調査結果や未来のマンモス像についてまで踏み込み、「過去・現在・未来」という三層に分かれた展示のなかで壮大な時の流れを体感できる構成だ。

【世界初公開】ケナガマンモスの鼻 (冷凍標本)/ 2013年に発掘。鼻先全体の様子がわかるものは世界でも唯一。また、先端部分の形も初めて解明され、従来の説をくつがえす大発見に。

最初のゾーンでは、マンモスが生きた「過去」に焦点を当て、当時の地球環境や進化の過程、絶滅の理由などを展示。監修者の一人、野尻湖ナウマンゾウ博物館の近藤洋一博士のナビゲートにより、「マンモスの絶滅理由は、まだ科学的には証明されていない」などといった新常識が解説されているのも見どころのひとつ。また、実際にマンモスの毛を触れる体験コーナーも。驚きの触感は、ぜひご自身で体感してみてほしい。

次のゾーンでは「現在」へと時を移し、マンモスの発掘現場を紹介。永久凍土が溶け、地面が陥没してできた直径約1kmの巨大クレーターの底に降り立ち、泥壁が頻繁に崩落し、足下がぬかるむという過酷な現場で発掘する様子が展示されている。本展では、そうした近年の発掘で発見されたケナガマンモスの「皮膚」や、マンモスと同時代を生きた共生動物のユカギルバイソンといった、世界初公開の冷凍標本が目白押し! なかでも、血液や尿が残る状態で発掘された仔ウマの冷凍標本は、生きていた当時とほぼ変わらないようにも見え、何万年も前の過去でさえ一気に身近に感じさせてくれるだろう。

【世界初公開】仔ウマ「フジ」(冷凍標本) / 約4万年前のオスの仔ウマ。太古の動物が、体毛や皮膚をはじめ、眼球や血液、内臓まで現存した形で発見されたのは世界初。

最後のゾーンは、「未来」の生命へと続く、近畿大学の「マンモス復活プロジェクト」を解説。冷凍標本から得た遺伝情報からマンモスの全貌解明に挑む、研究者たちの情熱や試行錯誤の長い道のりがマンガで紹介されていて、最先端の生命科学研究がどんなものなのか、科学の知識がなくても楽しみながら理解できるようになっている。鑑賞後は、「マンモスは蘇るのか」という問いが、「生命とは何か」という人類の問題にも通じることを実感するのでは。

そんなマンモスとの出合いを通して紡がれる過去・現在・未来の物語を、じっくりとご堪能あれ。

 『企画展マンモス展その「生命」は蘇るのか
日本科学未来館 〜11月4日(月)

東京都江東区青海2-3-6 TEL.03-5777-8600 営業時間:10時〜17時(入場は閉館30分前まで) 火曜休館(ただし、7月23日・30日、8月6日・13日・20日・27日、10月22日は開館) 料金・一般1,800円 mammothten.jp

『クロワッサン』1001号より

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