西 スヌーピーも初期と全然違いますしね(笑)。でも中国も一人っ子政策の余波で少子高齢化が進んでいて今は地方の魅力作りが求められている。マスコットもその一つ。地域創生が必要なのは日本だけじゃないんです。ところで、坂崎さんはこれからどんなキャラクターを描きたいと思いますか?
坂崎 私は世界視野で考えてはいませんが(笑)、描きたいものは変わってきた気がします。前は作り込んだ世界観の中から抽出されるキャラクターが好きでした。でも今は無条件にその形が素敵ならそれでいいかなって。
西 確かに、作り手が「これだ」と直感して描いた線や形が、結局は最も見る人の心に響くものになりますよね。キャラクターは企業や地域に関心を持つきっかけですから、まずは知ってもらうこと。さる高僧も仏教に関して同じことを言っていましたよ。関心を持つ契機は仏像の美でもなんでもいい、入り口がないことのほうが問題だと。
坂崎 確かに「知っている」だけで急にその物事が身近に感じますよね!
西 市民の公募で作られるゆるキャラも多く、それも描きながら地域の魅力を知ろうとする過程が尊い。例えば神奈川県厚木市の「あゆコロちゃん」は養豚場が多い土地柄と鮎が住む相模川を反映して豚に鮎がのってる(笑)。
坂崎 すごい(笑)。そのキャラクターを活かしていく上では仕様書だけに頼らない熱意も大事ですよね。
西 実際、ゆるキャラグランプリも地方創生に情熱を燃やす地域が強いんです。某県庁では「グランプリに未投票の人は投票してから帰りましょう〜」とか館内放送があったそうで(笑)。あと僕らは近年「ゆるビトグランプリ」というのも開催しているんですよ。
坂崎 ゆるビト!?
西 はっぴを着たキャラクターの付添人のことです。優勝者には「ゴールデンはっぴ」を贈るんですが、皆さんすごく喜んでくれますよ(笑)。
坂崎 素敵! 私も担当の方が「うちのペンギンはこんなことしない!」ってダメ出しをしてくれたり……愛を感じます(笑)。作る側は世に出た時点で手放した感があるので、作品が周りに愛されて育っていると幸せです。
西 坂崎さんは、企業や地方に関わる人の家族もきっと幸せにしていますよ。社員のお子さんは「うちのパパ、Suicaのペンギンの会社で働いているんだぞ!」って友だちに自慢しているはず。
坂崎 あはは、子どもにもわかりやすいですものね。グッズも出ていますし。
西 これだけキャラクターが人気になるのも、平和で自由な時代だからこそ。
坂崎 確かに! 平和じゃないとグッズも買えませんからね(笑)。
ゆるキャラの次なる使命は、ずばりアジア各国での地域おこし!(西さん)
生みの親としては作品が愛され、羽ばたく姿を見守るのが幸せ。(坂崎さん)