西 坂崎さんはキャラクターを作る時、依頼主と相談しながら作るのでしょうが、時には周りの人と意見が合わないこともあるでしょ?
坂崎 うーん、そういう場合は結局さりげなく消えてしまう気がします(笑)。チームの方と盛り上がって、さっと描いてすんなり完成したものが、結果的に長生きするキャラクターになっているかもしれません。
西 考え出すと説明的になる?
坂崎 そうなんです。ダイハツの「カクカク・シカジカ」は、最初から名前や設定が決まっていた珍しい例。その説明をしてくれた担当の方に似ています。
西 白いタートルを着ているちょっとスノッブな男性なんですね?(笑)
坂崎 ふふ、そうです。これも一度で決まったもの。チーバくんも千葉県の地図を見ているうちに、ぱっとデザインを思いついて。結局「なんか違う」のは少し変えても違うんでしょうね。そういう時は無理に形にしません。
西 潔い! だから坂崎さんの作品はプレーンで、どこかスヌーピーに通じるところがある。
坂崎 長く愛されるものは白米のようなニュートラルさというか、性別や年齢を感じさせないものが多い。見る人次第で様々な受け取り方ができるからでしょうか。とはいえ、私は万人に愛されるようにとも考えないんです。
西 プロだなあ。皆に好かれようと思ったらこんなにシンプルで潔い作品は生まれませんよね。一方で最近は「感性さえあればすぐにプロになれる」と勘違いする若い人が増えているように思う。デッサンを知らずにピカソのゲルニカを描こうとするような……。
坂崎 インターネットで絵も写真も世界に発信できる時代ですからね。でも最近のご当地キャラはプロの手によるものも多くて完成度が上がってきていますよね。深谷市の「ふっかちゃん」も完成度が高い!
西 完成度は年々高くなっています。昔はゆるキャラと呼ぶと「ゆるくありません!」って担当の人に怒られたのに、最近は先方から「ゆるいでしょ?」って売り込んでくる(笑)。いまや「ゆるい」は褒め言葉になりました。
坂崎 ゆるキャラは言葉の概念まで変えたんですね!
西 そうなんです。でもゆるキャラグランプリは来年でファイナルを迎える予定なんですよ。
坂崎 えっ、そうなんですか?
西 「日本を元気に」という当初の目的は果たしたかなと。今後のテーマはずばりアジア進出です。今、中国や韓国などではキャラクター本体というよりは、そのクオリティを管理するノウハウに関心が集まり始めているんです。
坂崎 日本のキャラクターには色や形を細かく指定した仕様書「スタイルガイド」があるのが標準ですしね。
西 そんな国は世界でも稀。日本は資源も乏しいし、経済の面でも停滞している。それでも日本のキャラクター文化が注目されていることをもっと誇りにしていいと思います。実際「日本のキャラクターは担当が変わっても顔が変わらない!」と驚嘆する海外の声は多いんですよ。
坂崎 描く側としては変わっちゃう気持ちもわかるんですけどね(笑)。