くらし

演目のジャンル分けを ご説明します│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

落語について解説してくださる書物や文章ーー“くださる”というのは、私たち本職は不精者が多く、そういう説明をしたがらないところを、研究しているかたがたが代わりに伝えてくれているという感謝の念ですーーでは、「演目のジャンル分け」をしている項目を多くお見受けします。スッキリわかりやすければ便利ですが、分類するのに複数の基準を物差しとして使っているために少々混乱することもあるのです。

たいていジャンル分けは最初に物語の主要舞台を物差しとして「長屋噺」 「お店(たな)もの」 「郭(くるわ)噺」などと分けられ、その例としていくつかの演目が記されます。

そのうちに分類の基準が「与太郎噺」 「若旦那もの」 「武家もの」といった主人公の身分へと変わり、さらに「芝居噺」 「怪談噺」 「人情噺」といった物語の性質での分類へと変化する、これらが並記された状態であることが多いのです。物差しがいくつもあるからどれかひとつに収まらず「『郭』を舞台にした『武家』の『人情噺』」なんて演目も存在しうるのです。

われわれ噺家はジャンル分けの物差しをいくつも同時に使い、なるべく違う要素で成り立っている演目がバラエティ豊かに番組に並ぶようにネタ選びをして、その日の寄席や落語会は進行します。けれどお客さまはあまりそういう細かいことはお気になさらず、演じられた噺の世界に入りこんで遊んでいただければ幸いです。あまり小難しい理論や過度な情報は素敵な落語日和をかえって妨げてしまうこともあるので要注意ですよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』999号より

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