そのうちに分類の基準が「与太郎噺」 「若旦那もの」 「武家もの」といった主人公の身分へと変わり、さらに「芝居噺」 「怪談噺」 「人情噺」といった物語の性質での分類へと変化する、これらが並記された状態であることが多いのです。物差しがいくつもあるからどれかひとつに収まらず「『郭』を舞台にした『武家』の『人情噺』」なんて演目も存在しうるのです。
われわれ噺家はジャンル分けの物差しをいくつも同時に使い、なるべく違う要素で成り立っている演目がバラエティ豊かに番組に並ぶようにネタ選びをして、その日の寄席や落語会は進行します。けれどお客さまはあまりそういう細かいことはお気になさらず、演じられた噺の世界に入りこんで遊んでいただければ幸いです。あまり小難しい理論や過度な情報は素敵な落語日和をかえって妨げてしまうこともあるので要注意ですよ。