「宮戸川」というのは東京・隅田川の浅草近辺の流域だけの別名です。けれど、その川の名は口演される機会が極めて少ない噺の後半にしか出てきません。故に前半部分だけを演じて終わるときは「〝お花半七馴れ初め〞の一席」などと言って演題のようにすることもあります。
後半部分は、叔父さんの勘違いでめでたく結ばれた若い二人に降りかかる運命の後味が悪いというので演じることを避ける人が多いのです。かく言う私も後半はお稽古さえつけてもらっていません。
それでも腕のある噺家が演じると芝居要素などが見事に効果を上げて「良いものを聞けたな」と思えるのは芸の力でしょう。前半で終わるときは、落語ではちょっと珍しい結末の付けかたをします。
演者それぞれの工夫の凝らしどころを、落語日和でぜひ楽しんでください。