くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】中年ですが夢が捨て切れません。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は中年から大きな夢を持つことが美しいのか悩む女性からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

山田さんと同じ中年なのでご相談です。もういい年ですが、私はまだ夢が捨てきれません。
中年から新たに何かを成し遂げた人(いまなら「まんぷく」のモデルである日清の安藤百福さんとか、隠居後に日本地図を完成させた伊能忠敬とか)などのポジティブな例を引き合いに出しては「人生100年、まだ折り返し地点、これからなんだってできる!」と思っていますし、そう思ってないと絶望しそうで怖いです。
ただ、自分がアメリカ映画に出てくる自己啓発セミナーの営業マンみたいな、暑苦しいタイプに見られてしまうのも怖く、そんな野望は秘めながら暮らしています。無理をせず自分の年を受け入れて自然体でいる中年が一番かっこいいようにも思えるからです。
そもそも人の目を気にしている時点で中年として美しくないかもしれませんが、山田さんが考える、理想の45歳ってどんな人物でしょうか。参考までに教えてください。
(まりぴ/女性45歳、Iターンで自然豊かな場所で暮らしてみたい気もする自営業)

山田ルイ53世さんの回答

以前、"一億総活躍"なるスローガンが世間をザワつかせたことがありました。
所詮、"活躍"などというのは、相対的な尺度に過ぎず、
「○○に比べて、△△は活躍している!」
ということですから、"総活躍"となると、結局誰も活躍していないのと同じ……虚しい言葉です。

大体、"理想の45歳"など存在しません。
かくいう僕(43歳)も、理想とは程遠い状態。
芸人を志すそのスタート地点で、"貴族"と自称することも、後に一発屋と揶揄されることも想定外……夢にも思っていませんでした。
結局のところ、「なれた自分でやっていく」、「理想とは程遠いけど、とりあえず生きていくのだ」ということに尽きます。

僕は「人生諦めが肝心」という言葉を大切にしていますが、"諦める"ためには、ある程度、行動や結果の積み重ねが必要です。
相談者の"野望"がどういうものかは分かりませんが、「とりあえずやってみる」というのはいかがでしょう。
断っておきますが、「行動しないと夢は叶わないよ!?」などと、ポジティブなことを言うつもりは毛頭ありません。
「この夢は叶わない」、「自分には分不相応な望みだった」……要は、「出来ない」ことを知るために、一刻も早く失敗を重ねて頂きたいのです。
絶望するということは、「自分に出来ないこと」のデータを、非常に高い精度で得られることでもあります。
その分、視界が開けるので有益です。
「諦めなければ、夢は叶う!」、「最後まで諦めなければ、必ず成功する」などと叫ぶ方々もいらっしゃいますが、その意見は、勝ち組の平均値に過ぎません。
「諦める前に、勝ちが来た!」、「たまたま勝ちが間に合った!」だけとも言えます。
いずれにせよ、自分の可能性を探るのではなく、一つ一つ、コツコツと潰していく作業……まずはそこからでは。
そういう意味で、"理想の45歳"があるとすれば、失敗、挫折の経験値が充分に貯蓄されていることかなと思います。
現実の世界では、何一つ成し遂げずに人生を終える人は沢山います。
それでも機嫌よく生きて良いし、そうすべきかと。
何者にもならずに死んでいくのも人生の勝ち、もとい価値の一つではないでしょうか。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

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