くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】受験にことごとく失敗しました。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は受験に失敗し、将来がわからなくなってしまった若者からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
高校卒業してから受験勉強を始めて1年経ち、受験したのですが、大学全て落ちました。親にはもう1年予備校に通わせるお金はないと言われたので、専門学校に行くつもりですが、専門学校の募集も終わってて夜間コースしかないことに気づきました。
なんかことごとく失敗して、自分がやりたい事、求められていることも分からずどうすればいいか分かりません。もうハタチになるのに情けないです。 (ペペロンチーノ/女性/高校卒業して1年間の受験勉強を終えた19歳です。)

山田ルイ53世さんの回答

「自分がやりたいこと」、「求められていること」が分からない。
誤解を恐れずに言えば、「何も求められていない」のではないでしょうか。
少なくとも、現時点で何者でもなく、専門学校の募集要項さえ事前に把握しなかったペペロンチーノさんに、何かを「求めている」人物がいるとすれば、
「もうちょっと、しっかりしてくれよー……」
と切に願っておられるに違いない、ご両親くらいでは。
これは決して、説教とか皮肉ではなく、むしろエール。
無意味に人生のハードルを上げて欲しくないと思うのです。

そもそも、「やりたいこと」を探すというのが大前提、当然のように仰っていますが、
「そんなものは、何もない……」
という人間もいます。
正直に言えば、筆者もその一人。
今ある仕事の全てを、己の内から沸き起こる衝動に従って、毎日夢中で取り組んでいるかといえば、そんなことは全くありません。
何かしらの番組に出演する際、事前にアンケートを書くことがありますが、「趣味・ハマっていること」などと訊かれると、もう何も思い浮かばない。
理由は単純、そんなもの無いからです。
誰もが、週末、BBQやボルダリングに興じているわけではないのです。

とは言え、何一つ恥じることはありません。
「やりたいこと」を見付け、「好きなこと」を仕事にし、素敵にキラキラ輝いて生きていく……そんな"義務"は本来我々にはありません。
朝目が覚めると、カーテンを"シャッ"と開け、
「今日はどんなことが待ち受けているんだろう!」
眩しい陽の光に目を細め、胸を躍らせる……もう一度言いますが、そんな生き方を皆がする"義務"は全くない。

それを踏まえた上で。
「やりたいこと」を探すというアプローチは、効率が悪いように思います。
言ってみれば、競技を始めたばかりの初心者が、走り高跳びのバーを世界記録に設定して練習するようなもの。
毎日、バーの下を潜るだけでは手応えもなく、結果記録は伸びないでしょう。
まずは自分がバーに"当たり"、"落とす"ことが出来る……失敗できる高さからです。

「やりたいこと」ではなく、まずは「やりたくないこと」を探すのも大事かと。
それに出会うべく、動く。
可能性を見付けるのではなく、コツコツ潰していく。
残ったものが、「やりたいこと」、少なくとも、「出来ること」ということです。

幸い、今相談者は、
「情けない……」
と感じているとのこと。
まずはその状態を脱すべく、夜間コースに通いましょう。
おそらく、専門学校の学費を出してくれるであろうご両親に感謝して。
自信を持って、"しんなり"生きてください。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

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