くらし

真打昇進披露で気づく 落語家修行を解説。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

この三月、私が所属している一般社団法人・落語協会のおめでた事として、爆笑の高座で人気の三遊亭歌之介師匠が四代目・三遊亭圓歌を襲名し、都内各寄席で順次披露興行が行われます。先代圓歌師匠は昭和二十年代、「歌奴」の時から売れに売れ、「三秒に一回の笑い」と言われる爆笑王でしたから、ぴったりな襲名です。

さて、通常は我が協会は三月と九月は真打昇進披露興行が行われます。前座・二ツ目の修行期間(十数年が一般的)を経て、落語家として一人前……と言いたいところですが、もちろん芸の道は一生修行です。しかし寄席の興行で一番最後の出番の「トリ」を務めることができるのも、弟子を取って育てることが許されるのも、この真打になることが条件ですから、やはりひとつの到達点とは言えるでしょう。

真打になるにはさまざまな準備が必要です。ご贔屓や関係者を招いての披露パーティー、そのための打ち合わせや挨拶まわり、その折の配り物としての扇子、手拭い、口上書の支度。先輩にも後輩にも気を使って気持ちよく応援してもらえないと寄席の興行も成功しませんし、打ち上げの手配、それら全てに必要な資金調達……。とても一人の力では立ちゆきません。ちょうど落語家になって十数年、一人で演じる落語家が、一人で一人前になったように勘違いしそうになる時期に「一人の力じゃないんだよ」と、高くなりかけた鼻を折ってくれるのが昇進披露とも言えます。お客様にも関係者にも感謝して、初心の高座はまさに「落語日和」ですよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』992号より

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