言われたその場で形を思い浮かべ、それを実際切り抜いてしまうのは人間業とは思えません。神業(かみわざ)ならぬ“紙”業……。と、紙切りの名人・先代林家正楽師匠はよく言ってました。そのお客様の注文に合わせた曲を、三味線のお師匠さんはとっさに思い浮かべ、すぐに弾き始めます。楽屋で聞くたびに「見事だなあ」と舌を巻いております。
落語が演じられている途中に効果音として三味線(太鼓や笛も)が奏される、これを“ハメモノ”と申します。上方落語は多くの噺にハメモノが入り、とても華やかで色気があります。東京はハメモノの入る噺は少ないものの、これまた大事なもの。セリフをきっかけに演奏が始まるんですが、私は決められたセリフをちゃんと言うのが苦手なんです。しくじって音が鳴らないと大パニック。“落語日和”どころじゃありません。