<今も昔も変らないのは、お嫁入り道具のなかに必ずきものが何枚か入っていることです>
40年あまり前の着物特集。着つけを手引きするページは、そんな一文からはじまっています。いまやお嫁入り道具をたずさえて結婚する人はどれほどいるのだろうかと、隔世の感がありますが、着物離れはすでにこの当時から進んでいたようです。
自分で着つけができず、着ているうちに着くずれしてしまう。動作もぎごちなく、自由にふるまえない。帯のしめつけが苦しい。そんな着物に対する悩みはいまも当時も同じ。そこで着つけのいい例、悪い例を並べて、衿、帯まわり、おはしょり、裾などの具体的なポイントに絞ってきれいに着こなすコツを説いています。
着物は正しい装いをいったん覚えてしまえば、さまざまなシーンで使えるもの。同じ一枚でも、帯や帯揚げ、帯締め、伊達衿で変化に富んだ装いが楽しめるといいます。ちなみに“ヤングミセス”に必需品の一枚として挙げているのは、いちばん幅広く利用できる色無地の一つ紋。吉凶両用の模様を選んでおけば、帯を変えるだけで慶事にも弔事にも使えるとおすすめしています。
たしかに応用がきき、流行にもあまり左右されないのが和装のよいところ。できればマスターしたいと思っている人も多いと思いますが、やはりおいそれとは手が出せないでしょう。名言の「着なれること」という、その一歩が最初にして最大のハードルかもしれません。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。