いまや2時間ドラマの定番スポットとして名高い崖シーン、そのオリジンとも言える後半のクライマックスで、ヒロインのバトンが社長夫人(高千穂ひづる)に渡されます。お金持ちのマダムらしい高貴さとともに、どこか堅気じゃないような色気が混在した高千穂ひづるの、鬼気迫る演技が見事です。さらに、出演シーンは短いながら、強烈な印象で映画を丸ごとさらっていくのが有馬稲子。めちゃくちゃ可愛いアイドル顔ながら、なぜか幸薄い役どころがハマる女優さんです。ほんのひととき味わった、ある男性との幸福な時間、そして彼を失い自暴自棄になった姿。そのコントラストが涙を誘います。
立場の違う三者三様の女性が登場しますが、彼女たちが男を取り合っていがみ合うわけではなく、お互いの事情にどことなく同情を抱いているところがいい! 敗戦後の食べていくのがやっとだった時代を、女の身で生き抜くことの過酷さを共有しているせいかもしれません。それを体現するかのように、女優たちがそれぞれの個性を引き立て、ヒロインのバトンをつないでいるようなストーリーラインにも、なんだかぐっときました。