そのことに怒った原節子のお説教が秀逸。「学校の名誉のためとか、家のため、国家のためということで、個々の人格を束縛して無理矢理にひとつの型にはめ込もうとする。日本人のいままでの暮らしの中で、いちばん間違っていたことなんです」。この明朗なセリフ、いままた怪しくなってきている政治情勢のなかで聞くと、いっそう感慨深く響きます。
なにより、原節子のセリフと行動をよくよく見ると、彼女が怒っているのは、女性をモノ扱いする考え方そのものだということがわかります。町医者が「女学生は学校を出たら嫁に行き、姑にいじめられたり亭主に殴られたりする。そういう生活に耐えていくには、ある程度バカであることが必要なんですよ」と、さも正論のように言うと、怒りのあまり平手打ちをお見舞い。そう、島崎先生は、フェミニストだったのです!
知性と強い意志を持ち、輝くように美しい原節子。男社会を別の角度から客観視している芸者役の木暮実千代もはまり役。毅然とした顔立ちとモデルのようなスタイルで、新しい時代の空気を体現する杉葉子の、絶妙にドライなキャラクター。戦後に女性が歩んだ道の第一歩に、この3人あり、だったのです。