くらし

落語を演じるうえでの 芸事の素養とは?│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

落語家は高座で台本もカンペも見ずに噺を演じなくてはなりませんから、日頃の稽古やおさらいは欠かせません。とはいいながら、ぞろっぺえな道楽者が多い稼業でもありますから、ついつい怠けがちになってしまうものです。それにただ丸暗記した噺を覚えたまんまペラペラとお喋りするだけではテープレコーダーと変わりません。お客さんにより深く楽しんでいただくには演者である落語家自身に人を惹きつける魅力があったり、聞く人を納得させるバックボーンがなければいけないようです。

唄や三味線、踊りの稽古に通う人が多いのは、芸事の素養を身につけておくと、高座でちょっと一節歌ったり、ふとした仕草がきれいに見えたりと、芸の助けになることが多いからです。

俳句や川柳をたしなむと短い言葉でより効果的な表現ができるようになる、言語のセンスを磨くのに役立ちます。芝居―この場合は歌舞伎です―を見に行く噺家も大勢います。昔の日本人にとって芝居は娯楽の王様でしたから、落語の中にもその要素を取り入れた「芝居噺」というジャンルがあります。中には好きが嵩じて噺家が大勢集まり稽古をし、芝居をやることがあります。“はなしか”が演じる「鹿芝居」です。

そうそう、相撲好きも多いですね。何を隠そう私も小学校三年生のときには将来は相撲取りになりたいと思ったくらい。東京場所のテレビ中継では国技館の客席に落語家の姿がちらほら、中には寄席の出番を休んで内緒で見に行ったのにテレビにばっちり映ってお席亭に怒られた人も。とんだ“小言日和”になってしまったようです。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』983号より

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