くらし

監修者に聞く『没後50年 藤田嗣治展』。“乳白色の裸婦”以外の多彩な作品を紹介。

東京都美術館で10月8日まで開催中の『没後50年 藤田嗣治展』。展覧会の監修を務めた美術史家の林 洋子さんに話を聞きました。
  • 撮影・中島慶子
《フルール河岸 ノートル=ダム大聖堂》1950年 ポンピドゥー・センター蔵 Photo(C) Centre Pompidou, MNAM-CCI, Dist. RMN-Grand Palais / Jacqueline Hyde / distributed by AMF Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833 「画面左、遠景のノートル=ダム寺院の尖塔の描き方に定住者の視点を感じます」(林さん)

「私は世界に日本人として生きたいと願う」と人生の約半分をフランス等で過ごした藤田嗣治。本展は欧米の主要美術館に収蔵された作品をはじめ、新出の資料など100点以上を展示。質量ともに史上最大級の回顧展と言える。

「藤田というと乳白色の裸婦や戦争の記録画を描いたという面で取り上げられることが多いですが、60年以上にわたって、ありとあらゆる技法に挑戦して作ることに捧げた人でした。今回は、これまで注目されてこなかった1930年代に中南米を旅行した際に描いた作品を紹介したり、日記や挿絵、暮らしで使う日用品として作られたお皿や器など、プライベートな藤田の一面も見られます」

そう語るのは展覧会の監修を務めた美術史家の林洋子さん。最初の渡仏時に描かれた静物画や乳白色の下地に進む前の人物画など藤田を語るうえでの貴重な作品も多いという。

《二人の少女》1918年 油彩・カンヴァス プティ・パレ美術館(スイス・ジュネーヴ)蔵 Photo:Studio Monique Bernaz, Genve (C) Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833「乳白色の下地へ向かう前の藤田が試みた筆致や技法が背景に表れています」

「第一次大戦を挟んだ30歳前後に描かれたこれらの作品は、藤田がモディリアーニらと知り合い、影響を受けるなかで、パリのアート界で生き残るには何が必要かを模索しているころのものです。その張り詰めた感じが作品にも表現されています」

《自画像》1929年 東京国立近代美術館蔵 (C)Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833 「16年ぶりに一時帰国した際、帝展に出品した作品です」

3フロアー、8章で構成される本展では、23歳で最初に描いた自画像から洗礼後の十字架をモチーフにした最晩年の作品までが展示される。

「今見てもどの時代の作品も古びていないし、訴えるものがあります。展示数も多いので、時間もかかるかと思いますが、これまで抱いていた藤田像とは違う一面を感じたり、お気入りの作品が見つかるはずです」

『没後50年 藤田嗣治展』
東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)にて10月8日まで開催中。03-5777-8600 営業時間9時30分~17時30分(金曜~20時) 休日:月曜(9月17、24日、10月1、8日を除く)、9月18、25日 料金・一般1,600円 

http://foujita2018.jp

林 洋子さん
はやし・ようこ 美術史家
1965年、京都生まれ。文化庁芸術文化調査官。専門は近現代美術史、美術評論。近著に『藤田嗣治 手紙の森へ』(集英社)。

『クロワッサン』981号より

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間