くらし

国によって、時代によって、味の好みも作り方も変ってくる――茂出木心護(洋食や「たいめいけん」主人)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、洋食の名人が語る料理哲学に、耳を傾けてみましょう。
  • 文・澁川祐子
1977年9月号「洋食屋さんの料理」より

国によって、時代によって、味の好みも作り方も変ってくる――茂出木心護(洋食や「たいめいけん」主人)

茂出木心護さん(もでぎしんご、1911-1978)は、1931(昭和6)年創業の老舗洋食屋の初代主人。前回はうつわ選びを指南していましたが、今回は巻頭特集で本格的な洋食の作り方を伝授しています。

トンカツ、カニコロッケ、キャベツの酢油あえ、小エビのピラフ。それにエスカルゴやムール貝、チキンコキールなど多彩な小皿料理の数々。惜しげもなく、プロならではのコツを披露していきます。

トンカツはパン粉をつけたらすぐに揚げはじめる、バターを焦がしたらケチらないで捨てる、ピラフは隠し味にしょうゆを使う。実用的なアドバイスが次々と繰り広げられるなかで時折、茂出木さんの料理哲学がのぞきます。その一つが、今回の名言です。

ピラフは本来、洗った米を炒めてスープで炊く<炊き込みごはん>の一種ですが、茂出木さんが教えるレシピはあらかじめ炊いてあるごはんを炒めるというもの。そのほうが日本人の口に合っていると考えるからです。

日本のすしめしも、外国に行けば、エビやサーモン、ピクルスなどを入れてライスサラダになる。国や時代によって、味の好みも作り方も変わるのが料理。

続けて<食べる人の口に合わせて作るのがうまいコックなんだろうな>と茂出木さん。こうした言葉に、愛され続ける味の秘密が垣間見られます。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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