「ウチでは、朝のパンは蒸して食べるんです」
『かまパン』の米粉入りバゲットを切り分けながら早川さんが話し始める。
「弟子を含めてウチは大人数で朝ごはんを囲むことが多かったので、みんな一緒にあたたかいパンを食べる方法はないかと考えたんです」
トーストだと、一度に焼ける量が限られているので、どうしても全員が一斉に焼きたてのパンとおかずにありつくことができない。
「蒸すことで、素材の味や旨みを引き出したり、ふわふわ、もちもちした食感も味わえます」
使いこんだ2段式の大きな蒸し器にカットしたパンを並べながら、早川さんが続ける。コンロにかけた鉄鍋の上に蒸し器を置いて約10分。蒸し器の蓋を取ると、パンの香りがあたりいっぱいに広がる。
「テッペイ、食べれるよ!」
早川さんは小野さんに声をかけると蒸し器を食卓に移動させる。この日の小野家の朝食は夫妻以外にキョウさん、小野さんの弟子で台湾出身のハンさん、長男で陶芸家の象平さんの総勢5人。
木目が美しい床に敷いた布の上には、小野さんの器に盛った料理が並ぶ。その中央にどんと置かれたのが、蒸し器に入った6種類のパン。めいめいの皿に取り分けながら食べるのが小野家の朝食スタイルだ。