前座、二ツ目、真打。噺家の身分を解説します。│柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
東京の落語界は三つの階級に分かれています。入門して数ヶ月から一年程の見習い期間を経て、まず「前座(ぜんざ)」という身分になります。これはまだ半人前、どうかするとそれ以下ともいえる修行期間。毎日師匠の家の掃除やお使いなどの雑用をし、寄席に行き開演前から終演後まで、出演する芸人にお茶を出したり、着物を着せたりたたんだり、出囃子の三味線に合わせて太鼓を叩き、興行時間の調整から出演料を渡すなど、ありとあらゆる仕事をめまぐるしくこなしてゆきます。高座へ上がって落語も喋りますが、あくまで楽屋での雑用が前座の本分とされています。
その前座を三年から五年程務めて昇進するのが「二ツ目(ふたつめ)」。師匠宅、楽屋での雑用から解放され、落語を一席喋ることでお給金を頂く、本当の意味での落語家のスタートラインです。
十年程の二ツ目の期間に持ちネタを増やし、応援してくださるお客様も獲得してゆかなくてはなりません。もう実力で活動の場を広げなくてはなりませんから、ぼんやりしてると楽屋の雑用だけでなく、落語の仕事からも“解放”されてしまい、アルバイトで食いつなぐ……なんてことになりかねません。
そんなこんなを経て入門から十数年で「真打」に昇進となります。寄席などで昇進披露の興行をおこない、そのトリを務めて一枚看板として大活躍……できるかどうか、真の芸の力が問われるなかなか厳しい道なんです。でも真打になったときには周りがみな「師匠」と呼んでくれて、それは気恥ずかしくもやはり実に嬉しい瞬間です。寄席のトリで一席演じるのは真の“落語日和”ですよ。
柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com
『クロワッサン』978号より