数年前からラジオリスナーになったという20代の男性からこんな意見を聞いた。
「この間初めてチューナーでラジオを聴いたら、BGMやCMを聴くことができて、すごく新鮮でした」
彼は地方に住んでいるので、関東で流れている番組は“ラジオクラウド”という局の提供するサービスをスマホで聴いているという。ラジオクラウドでは、コーナーごとに放送が区切られて配信されるので、リスナーは好きな時に好きな番組の好きなコーナーを選んで何度も聴くことができる。しかし、権利の関係でCMや音楽、BGMまでも(ごく小さな音では聴こえることもある)カットされる。彼は無音の中で繰り広げられる会話だけを楽しんでいるようだ。
「じゃあ“明神水産”のCM知らないんですか?」
「知りませんねえ」
「お悩み相談のコーナーが始まると、あーもう昼の12時だなって思ったりしないってこと?」
「しないですねえ」
そういえば、ラジオ好きのアイドルが「わたしがラジオを開くときは……」と言っていて驚いたことがある。彼らにとってラジオはアプリと同じで、“つける”ものではなく“開く”ものなのだ。
便利になったとはいえ、チューナー……いや、ラジカセに慣れ親しんだわたしとしてはラジオが“コンテンツ”という認識をされつつあるのが少し寂しくもある。
それにしても。今だにダイヤルを回し、電波を探してラジオを聴いているなんて、まるで原始人の気分だ。