くらし

生放送に出演するなかで 心がけていること。│しまおまほ「マイリトルラジオ」

ラジオのレギュラーコーナーをもっている。途中産休を挟んだが、12年になる。

最初はコツを掴むのに苦労をした。自分の“キャラ”を作って臨んだほうがよいのか、話は“盛った”ほうがよいのか、どこまで説明的であるべきか。

それまで、あの人は面白い、あの番組はツマラナイ、話し方が下手だ、上手だ、言いたい放題言っていた自分が、生放送でマイクの前に座るのだ。

想像しただけでも、恐ろしいでしょう。12年、毎週出演している今だって、書いていてブルッとくる。

その後、コツを掴んだとは言えないが、最初の数回で「無理をしたら続かない」ということだけはわかった。パーソナリティーのライムスター・宇多丸さんに追いつくよう映画を沢山観よう、辛口な発言をしてみよう、そんな風に頑張ってみたけれど、不誠実で無責任な自分の言葉に疲れてしまった。年に150本映画を観る宇多丸さんに対し、わたしは数本。どっちつかずの意見を言って「だらしないなあ」と呆れられる。「それがわたしだ!」そう思えるようになったら、ラジオが楽しくなった。

今では本番前にテーマを決めて、あとは出たとこ勝負。心がけているのは「無理をしない」「初めての人にも楽しさが伝わるように」。これがわたしにできる出来る限りの〝誠実″。面白いラジオパーソナリティーは、どんなに無責任でいい加減に聴こえても間違いなくリスナーに対して“誠実”さを貫いている。長年やってきて、それだけはハッキリとわかった。

しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。

『クロワッサン』986号より

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