同じく小津安二郎の『晩春』では嫁ぐ娘を演じた原節子が、歳を重ねて母親役に回っているのも感慨深く、お見合いおじさんと化した三人衆のコミカルなやりとりも最高! しかしながら全員をなぎ倒す勢いで、司葉子とはまるでタイプの違う親友、百合子(岡田茉莉子)の存在が光っています。下町の寿司屋の娘で、チャキチャキした快活な性格。お節介が過ぎて親友を思い悩ませるおじさまたちのもとへ一人乗り込んだあげく、あっさり手玉に取るシーンはお見事。
丸の内のオフィスで働きながら青春を謳歌する2人ですが、この時代は結婚=寿退社で、いずれはなればなれになる運命。それを予感してか、「あたしたちの友情ってものが結婚までのつなぎだったら、とってもさびしいじゃない」なんて言う百合子のセリフには、思わずせつなくなります。
清楚で控えめな司葉子とは好対照ですが、それによってお互いがお互いの魅力を引き立てあっている、日本映画屈指の親友なのであります。小津映画を「なんか辛気臭~い」と敬遠している人にこそ観てもらいたい、コメディ調の快作です。