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映画史に残るナイス親友 アヤ子&百合子!│小津安二郎『秋日和』│山内マリコ「銀幕女優レトロスペクティブ」

『秋日和』。1960年公開の松竹作品。DVDあり(販売元・松竹)。
『秋日和』。1960年公開の松竹作品。DVDあり(販売元・松竹)。

気品溢れる顔立ちと洋装が似合うほっそりしたスタイルの司葉子は、万人が納得する美人中の美人。とりわけその美貌が際立っているのが、名匠小津安二郎の『秋日和』です。

後期小津作品らしく、物語の中心は娘の縁談。24歳になるアヤ子(司葉子)は母(原節子)と団地で二人暮らし。亡き父の友人であるおじさま三人衆(佐分利信ほか)が、「アヤちゃんもそろそろお嫁に行かなくちゃね」と、後藤(佐田啓二)との見合いをお膳立てするものの、当の本人は結婚する気はないという。聞けば、自分が嫁いでしまっては、母がひとりぼっちになってしまうからだという。「だったら君のお母さんが再婚すればいいさ」と、おじさまは勝手に母親の縁談を持ち出してアヤ子を説得しようとするが、それが完全に裏目に出てしまい……。

同じく小津安二郎の『晩春』では嫁ぐ娘を演じた原節子が、歳を重ねて母親役に回っているのも感慨深く、お見合いおじさんと化した三人衆のコミカルなやりとりも最高! しかしながら全員をなぎ倒す勢いで、司葉子とはまるでタイプの違う親友、百合子(岡田茉莉子)の存在が光っています。下町の寿司屋の娘で、チャキチャキした快活な性格。お節介が過ぎて親友を思い悩ませるおじさまたちのもとへ一人乗り込んだあげく、あっさり手玉に取るシーンはお見事。

丸の内のオフィスで働きながら青春を謳歌する2人ですが、この時代は結婚=寿退社で、いずれはなればなれになる運命。それを予感してか、「あたしたちの友情ってものが結婚までのつなぎだったら、とってもさびしいじゃない」なんて言う百合子のセリフには、思わずせつなくなります。

清楚で控えめな司葉子とは好対照ですが、それによってお互いがお互いの魅力を引き立てあっている、日本映画屈指の親友なのであります。小津映画を「なんか辛気臭~い」と敬遠している人にこそ観てもらいたい、コメディ調の快作です。

山内マリコ(やまうち・まりこ)●作家。映画化した『ここは退屈迎えに来て』が今秋公開。新刊は『選んだ孤独はよい孤独』。

『クロワッサン』976号より

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