くらし

『女が美しい国は戦争をしない』著者、小川智子さんインタビュー。「メイさんは生涯、おしゃれが大好きでした。」

おがわ・ともこ●北海道・札幌生まれ。脚本家。映画『イノセントワールド』『天使に見捨てられた夜』『狼少女』、テレビドラマ『スカイハイ』『恋して悪魔』などの脚本を担当。著書に『ストグレ!』(講談社)などがある。

撮影・中島慶子

戦前、戦中、戦後を通じて美容家として活躍。2007年に96歳で亡くなるまで現役として日本じゅうの女性を美しくするという夢を追求したメイ牛山さん。その波乱万丈で、ドラマチックな人生を著者の小川智子さんはメイさんをよく知る関係者への綿密な取材と豊富なエピソードとともに描く。

「メイさんは生涯を通じておしゃれが大好きでした。それは男の人からどう見られるかということよりも、女にとってきれいでいることが、毎日を明るく幸せに生きるうえでは必要だと考えていたからなんです」

タイトルに使った「女が美しい国は戦争をしない」は、戦時中に疎開先の長野・上諏訪で美容教室を行っていた際にメイさんが発した言葉だ。

「パーマネントやおしゃれが華美であるとして禁じられる社会には平和も自由もなく、女性のみならず男性にとっても不幸という強い実感があったのでしょう」

戦後焼け野原になった東京・六本木にハリウッド美容室を開店。メイさんのその人の個性を生かすヘアメイクを慕う女優や、流行をとりいれたいという客で店は大繁盛。さらに高度経済成長を受けて、近隣に店舗を移転して東洋一と呼ばれるビューティーサロンを建設。日本の復興に合わせるかのような勢いで、メイさんは「美」への思いを具現化していく。

「手先が器用なうえに、並外れた技術と能力を持っていたメイさんは、そこで満足せずに、もっと良い美容法はないかを亡くなるまで考えていたんです」

70代に入ってからはお団子ヘアに着物スタイルでバラエティー番組にも出演。自身が実践する自然食や美容のアドバイスを行い人気者にもなった。さらに88歳の米寿を迎えると、長年親しんだサロンと隣接する自宅を六本木再開発のなかで移転する。

「ふつうなら思い出の場所が変貌することを悲しむと思うんですが、メイさんは『新しくなるんだからいいじゃない』と言って、気持ちを切り替える。くよくよ悩むということがなく新しい試みに目を向けていくんです」

4年後には「ハリウッドビューティプラザ」として、六本木ヒルズ内に地下3階、地上12階建ての自社ビルが完成。メイさんは新天地で講演会を行うなかで、後進の指導にあたった。

「メイ牛山の人生は、どんな時代や環境にあっても、自分にできる最善のことを精いっぱいやって楽しく生きることが大事だと教えてくれると思います」

講談社 1,600円

『クロワッサン』973号より

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