料理研究家・坂田阿希子さんが愛用する「これは私の手の一部」という道具たち。
毎日の料理を手早くすませるためには調理道具の使い勝手こそが最優先課題です。鍋やフライパンの中で自在に操れて、料理の仕上がりをびしっと決めてくれて台所に置けばすっきり収まる、そんな理想の道具たち。料理上手のお気に入りの逸品を取材しました。
撮影・三東サイ 文・河野友紀
15年愛用する木べらは、細さ、薄さ、直線型の先端など、使いやすい理由に溢れた銘品。
坂田阿希子さんのキッチンにあるツール立てには、新しいものから使い込んだものまで、この木べらがなんと5本も刺さっている。長野に住む木工作家・柏木圭さんが1本ずつ手作りしているこの木べら、15年前に偶然松本のギャラリーで巡り合って以来、なくてはならないツールの一つだ。
「まず、多くの木べらに比べて全体的に細いのがいい。柄も細身なので握りやすく、ヘラの部分の幅も狭めなので、小回りが利く。この2つの長所ゆえ自分の腕の延長のように操れるので、調理自体が手早くなります。例えばホワイトソースなどを作るとき、この木べらは小ぶりなので、ダマになることもなく材料同士を手早くしっかり混ぜることができる。また、先端がカーブせず直線なので、鍋底にしっかり密着し、焦げついた旨味までしっかりとこそげ取りやすい。さらに、先端が薄めなので、食材が今どういう状態なのかが手にダイレクトに伝わってくる。肉などを木べらで押したときに、火入れの状態がわかったり、野菜のしんなり具合が伝わったり、スムーズに調理が進みます」
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