【ポケットからごほうび #4】二重の固結び──西田尚美さんの心を動かす日々の出来事
文・西田尚美 イラストレーション・qp
お米の記憶
最近購入した精米機。こんなに小さくて簡単に精米出来るなんて知らなかった。美味しい玄米をいただいたり、家に古米があったりしたので「こんな私にちょうどいい精米機ってないかしらん」とリサーチしたら、今はすごくコンパクトなのがあるのですね。2合ずつ精米出来るのがちょうどいい。昔は、自分たちも若くて子どもも食べ盛りだったりして3合とか4合とか炊いていたけれど、最近の我が家は2合炊いてもちょっと余る。余ったご飯はおにぎりにして翌朝食べる。その感じもちょうどいいのである。
お米を食べたい時に食べるだけを精米する。まるできちんと生活しているみたいに感じて、なんだか気分があがるのだ。ジューサーミキサーのようにぐるぐるまわりながら、お米が白くなっていく様を見て、精米機の蓋をパカっと開けると米ぬかが「こんなに!?」とどっさり出てくることに毎度びっくりしてしまう。まだ白米にしかしたことがないので、近いうちに5分づきか7分づきにして炊いてみようと思っている。
私はこの夏、長崎県の波佐見町を舞台にしたドラマの撮影で、約1カ月ほど波佐見に滞在していた。波佐見は波佐見焼という陶器の産地でもあるけれど、鬼木棚田という素晴らしく美しい棚田がある。棚田百選にも選ばれているらしい。夏だったので青稲が眩しくて、風に揺れている風景がなんだかとても懐かしい気がした。子どもの頃、親戚が田んぼを持っていたので田植えや稲刈りのお手伝いによく行っていたからかな。でも今思えば、邪魔していただけかもしれないけれど。作業後に親戚皆で食べるご飯が美味しかった。その思い出があったからか、波佐見の町はすごく居心地が良かったのだ。
私は地方ロケに行くとレンタカーを借りて、道の駅に行ったり、その土地の美味しいものを調べて食べに行ったりする。今回も地元の方に聞いて、いろんなところに行ってきた。棚田の周辺を走る時の気持ち良さよ…もし、行かれることがあればぜひ味わって欲しい。撮影後、役場の方に波佐見米というお米をいただいた。玄米だったので、私のピカピカの精米機が役立った。精米したてのお米を洗ってちょっと長めに浸水して炊いてみたら、つやつやで、モチモチで美味しかった。お米を食べながら、東京に住み始めた頃を思い出した。東京って視界の縁に山がないんだ!と驚いたっけ。今は東京生活の方が長くなり、だいぶ慣れてきたが街がアップデートされる度くらくらする。
『クロワッサン』1176号より
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