【ポケットからごほうび #2】海苔がすごい──西田尚美さんの心を動かす日々の出来事
文・西田尚美 イラストレーション・qp
海苔がすごい
焼き海苔を炙って、ちょっとお醤油をつけてご飯にまいて食べる。子どもの頃、祖母の家で食べていたその食べ方が再燃している。あの頃食べていたような海苔に出合ったからだ。成清海苔店の「優等」という海苔。厚みといい、海苔の濃さというのか、香りと味と、パリッと感。炙らなくとも、あの頃祖母の家で食べたノスタルジィ海苔と同じ味がする。ちょっと値は張るけれど、一度食べたら別の海苔が少し物足りなくなってしまう。たかが焼き海苔、されど焼き海苔なのだ。美味しすぎたので二度目を注文し届くまで、手巻き寿司のとき余った海苔を炙りつつ凌ぐ。だが炙ってもやはり物足りなさを感じる。舌が肥えるとはこういうことか。
「そんなパリッと海苔が最近好きなの~」という話を友人にしたら、とある海苔おかきが頭の中に浮かんできた。
「海苔といえば、さかぐちの海苔のおかき最高だよね!」。
市ケ谷にあるおせんべい屋さんの海苔おかき、四角い一口サイズのおかきにピチッと黒光りした海苔が巻いてあり、缶を開けたときのあの絶対感、海苔の黒が圧巻なのだ。
「あ、尚美さん、あれ知らない? 揚げおかきに海苔が巻いてあるやつ!」。知らん……なんだそれは。速攻調べた。川崎にあるおかき屋さんで、買うのにすごく並ぶらしい。まだ暑いし、並ぶのはちょっと疲れるお年頃ですよ、私。
でもそんなに美味しいのなら食べてみたい。友人は「そのおかきの海苔が本当美味いんだよー」と力説する。もうこれは並ぶしかない! よし、川崎へ行こう! 店舗を調べて色々情報を掘っていたら、なんと銀座の歌舞伎座で売っている……? 歌舞伎座のお土産で月に2度ほど限定ですって。海苔おかきのために歌舞伎、観に行くかー。と思ったら、映画「国宝」を観て以来、歌舞伎にハマった人が近くにいた。しかも近々観に行くらしい。(今月の海苔おかきの発売日に行って! 頼む!) 心の呪文を唱えつつチケットを取った日を聞いたらば、おかきの発売日! やったー。絶対忘れずに買ってきてね!と念押ししたら、買ってきてくれた。
歌舞伎座と海苔巻のコラボ! 包装紙にまで歌舞伎座と入っている。
箱を開けると海苔巻おかきの袋にも歌舞伎座と印刷されている。なんなのこの特別感。高級歌舞伎揚に海苔が巻いてあるおかき。確かに海苔がすごい。パリッと海苔とおかきを堪能。
そしてもう一種、塩おかきにも巻いてある。塩も最高ではないの。そうこうしているうちに「優等」が届いた。
『クロワッサン』1174号より
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