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ジャミロクワイ「Virtual Insanity」──洒脱なグルーヴの奥に、テクノロジーへの静かな警告

高橋芳朗の暮らしのプレイリスト。今回は、ボーカルのジェイ・ケイが床の上を滑るように舞うミュージックビデオでおなじみ、ジャミロクワイの「Virtual Insanity」。今夏でリリースから30年を迎えたこの曲の誕生のきっかけは、意外にもジェイ・ケイの来日中の体験でした。

文・高橋芳朗

「Virtual Insanity」が収録された、ジャミロクワイの1996年のアルバム『Travelling Without Moving』
「Virtual Insanity」が収録された、ジャミロクワイの1996年のアルバム『Travelling Without Moving』

ボーカルのジェイ・ケイが床の上を滑るように舞うミュージックビデオでおなじみ、ジャミロクワイの「Virtual Insanity」が今夏でリリースから30年を迎えました。日清カップヌードルなど数々のCMに起用され、日本でも幅広い世代に浸透。弾むピアノとファンクのグルーヴに、思わず体が揺れる方も多いのではないでしょうか。

曲の誕生のきっかけは、意外にもジェイ・ケイの来日中の体験でした。雪に覆われた北国の街。人影のまばらな地上から階段を下りると、店が軒を連ね、大勢の人が行き交う地下街が広がっていました。先ほどまでの静けさが嘘のような、光と喧騒。彼は、そこに文明の行き着く先を見たのです。

洒脱な曲調とは裏腹に、歌詞が突きつけるのはテクノロジーへの警告です。便利さと引き換えに、私たちは人としてのぬくもりや、自然とのつながりを手放してはいないか。技術はやがて、命の設計にまで踏み込むのではないか。そんな不安を歌が刻んだ翌年、クローン羊ドリーの存在が公表されました。ジェイ・ケイ自身、この偶然を皮肉交じりに振り返っています。

あれから30年。私たちは、この曲が描いた光景を生きているのかもしれません。心地よいリズムに身を任せながら、改めて歌に耳を傾けてみる。多くをAIに委ねるいま、「Virtual Insanity」に込められた予感はいよいよ現実味を帯びてきています。

  • 高橋芳朗 さん (たかはし・よしあき)

    音楽ジャーナリスト

    TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』『金曜ボイスログ』などに出演中。共に番組選曲も担当。

『クロワッサン』1174号より

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