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『斜め45度の処世術』小川 哲 著──自分の中の「隠れひねくれ者」が共鳴する

漫画原作者。1977年、大阪生まれ。ビジネス誌から企業紹介漫画など幅広く担当。著作に『マンガでわかるテスタの株式投資』など。星井博文さんが紹介する一冊。

文・星井博文

『斜め45度の処世術』 小川 哲 著 CEメディアハウス 1,650円
『斜め45度の処世術』 小川 哲 著 CEメディアハウス 1,650円

世界を「斜め45度」から眺める小説家、小川哲さんの思考を綴ったエッセイ集である本作。毎月、様様な議題を元に「斜め45度」の世界観が展開される。もっと端的に言えば、「ひねくれ者」がこじらせた世界だ。

私は漫画原作者として、「なんでも漫画にする男」を標榜して仕事をしている。そんな私自身は斜め45度どころか、ほぼ0度の場所に立っている極めて平凡な人間。だからこそ、小説家はどんな角度で世界を切り取っているのかが気になり、本書を手に取った。

まず目を引くのは、各タイトルの秀逸さ。「人間関係に悩むのは傲慢である」「レジの人に意志を奪われたくない」「『あけましておめでとう』を言いたくない」など、一読するだけで面倒くさい人だなぁ……、さぞかし疲れるだろうと、にやにやしてしまう。

だが恐ろしいことに、読み進むほど「……わかる、わかってしまうぞ」と、自分の中の「隠れひねくれ者」が共鳴を始めているのだ。

特に打ちのめされたのが、「“変な人”に憧れてしまう問題」というエピソードだ。著者は、自分が「普通の人」と見られることに恐怖を感じ、同級生にいた本物の「変な人」を研究し、無理して演じて、その結果虚無感に襲われる。……やめてほしい。鏡を見せられているようで、読んでいて変な汗が出た。私もまた、「変な人」が持つ圧倒的な自由さや、誰にも媚びない独自の視点に、強烈に憧れているのだ。

また、「なぜこの人の話はつまらないのか」も興味深かった。著者は単に「面白い」「つまらない」を直感で分けるのではなく、なぜつまらないのかを言語化していく。

これは創作に関わる人間にとって、極めて実践的な視点だ。自分が「面白くない」と感じる対象に出会った時、それは対象の問題ではなく、受け取り手の能力が足りていないだけかもしれない。その健全な疑いを持つことの大切さを、改めて突きつけられた。

さらに笑えない(いや、笑うしかない)のが、「好き嫌いは言語化しないほうがいい」という指摘である。……今まさに、私はこの本の「好き」を必死に言語化しようとしている。全否定である。犯行現場を著者に取り押さえられたような気分だ。映画を見て「共感したから面白い」と安易に理由を固定してしまう危うさを説く。実際には「共感できたけれどつまらない映画」も存在する。好きな理由にも嫌いな理由にもなり得る曖昧な感情を、安易な言葉で固定してしまうことへの警鐘。その鋭さに、書評を書く手が止まりそうになった。

本書は、私たちが何気なく見過ごしている日常の違和感を、決して逃さず掘り下げていく。

世の中の情報を右から左へ受け流し、「わかったふり」をして翌日には忘れてしまいがちな私にとって、その執拗なまでの深掘りはとても刺激的だった。

読み終えた後、ひねくれ者のスパイスによってあなたの視界は確実に「斜め」に歪み、そして日常が少しだけ、面白おかしく、かつ面倒くさくなることを保証する。毒気と愛着を込めておすすめしたい一冊である。

  • 星井博文 さん (ほしい・ひろぶみ)

    漫画原作者

    1977年、大阪生まれ。ビジネス誌から企業紹介漫画など幅広く担当。著作に『マンガでわかるテスタの株式投資』など。

『クロワッサン』1170号より

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