京都ならではの食文化がギュッと詰まった寿司とお弁当
撮影・西岡 潔 文・齋藤優子
暖簾をくぐって受け取りたい。 手間のかかった弁当。
東山|瓢樹(ひょうき)「御折詰(おおりづめ)」
代々続く料亭の味と技を、美しく盛り込んだ折詰。
1920年、『瓢亭』からの暖簾分けとして料亭を開いたのが始まり。現在は4代目がお弁当と仕出しの専門店を営む。打ち水を施した石畳を進み、引き戸を開けると、正面に〝五味調和〞の掛け軸。〝酸、甘、苦、辛、塩味をバランスよく〞という代々の教えは、折詰にも受け継がれている。さらに焼く、炊く、揚げると異なる仕事を施した品々を、真ん中をやや高くして盛り込み、季節の青物で彩りを添えるのが流儀だ。『瓢樹』独自のごま和え、海老のみじん粉揚げ、巻きすで瓢(ひさご)形に象った出汁巻き、豆腐から作る飛竜頭の炊き物……。口にするとダシや煮汁がふっくらと広がる繊細な味わいを、冷めてもおいしいという京都府産にこまる米を炊いた淡い桜ご飯と。
◆京都市東山区進之町581
TEL.075・561・1369
営業時間:10時〜18時 水曜、第3火曜休
北大路|Ototojet(オトトジェット)「手毬寿司」
京で生まれた手毬寿司を天然の鮮魚で仕立てる。
新鮮な魚がいつも食卓にあったという石川県出身の店主が、海から離れた古都で、天然ものにこだわる鮮魚店を始めて20年余り。生け花の経験を活かし、〝魚をいける〞をコンセプトに始めた刺身や海鮮丼が評判となり、誕生させたのが、鮮魚で仕立てた手毬寿司である。尾を返した海老を真ん中に、桜の葉で巻いたキハダマグロ、明石のヒラメと木の芽など8種。熟成させたり、炙ったりと仕事を施したネタは、口ほどけを考え、丸型ではなく、小ぶりの握り風に。食べやすいよう入れた包丁目は見た目も美しい。
◆京都市北区紫野石龍町39・1
TEL.なし
営業時間:12時〜19時 水曜休
四条河原町|てらまち福田「鯖寿司」
京寿司を代表するひとつ、鯖寿司を炊き込みご飯で。
京都を代表する料亭『和久傳』などで経験を積んだ店主が営む気軽な割烹で、常連客の多くが頼むのが、鯖寿司だ。竹皮をほどくと現れるそれは、ご飯が茶色である。実は、店主が前職から作り続けているもので、醤油をつけずに楽しめるようにと考案されたという。冷めてもおいしいとされる近江産キヌヒカリを、昆布と醤油で炊き、寿司酢を合わせて酢飯とする。そこに塩と酢で半生に近い状態に締めた鯖が半身まるごとのり、ずしりと重い。〆鯖だけ、酢飯だけでもいけるほどだが、重なると何倍も旨い。
◆京都市下京区恵美須之町528 えびすテラス2F
TEL.075・343・5345
営業時間:12時〜13時30分LO、17時〜22時LO 火・水曜休
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