くらし

料理研究家の松田美智子さんが惚れる、まっとうな京都の洋食店2。

旨い店がごまんとある街だからこそ知りたい、食道楽の松田美智子さんが、京都でその店に通う理由。
  • 撮影・福森クニヒロ 文・齋藤優子

まっとうな京都の洋食。

“洋食の素晴らしさを再発見しています”

2泊3日ぐらいで滞在する時は、一度は必ず、洋食店を訪れます。カウンターの店が多いので、ひとりで立ち寄ることができる気軽さも、選ぶ理由のひとつです。エビフライにしても、ビフカツやハンバーグにしても、仕事がていねいで、作り方にも美しさにもこだわった、きちんとした料理をいただける店が多い。

総じて、味がすっきりしているようにも感じます。東京では、自分で作ってしまうこともあって、外で洋食をいただくことは稀。それだけに、京都で洋食の素晴らしさを再発見しています。

この2軒は、タイプこそ違いますが、どちらも改めてそう感じさせてくれる良店です。

【京都市役所前】洋食おがた

洋食おがた特製ハンバーグ3,140円。この日は、豚肉の配合は控えめに、肉の旨味が濃厚なあか牛の挽き肉を使用。

最高の食材を馴染み深い洋食メニューに仕立てる人気店。

店主の緒方博行さんは、日本中から届く一級の食材を、最高の形で洋食に落とし込む名人。精肉の名店、滋賀『サカエヤ』の牛肉を使うハンバーグは、食材ありき。岡山のブラウンスイス牛のこともあれば、熊本のあか牛の時もある。

豚挽き肉を合わせてふっくら俵形にし、蒸し焼きのように火を入れたハンバーグは、肉の味がダイレクトに迫る。そこに、ビネガーなどを利かせた2週間かけて作るデミグラスソースが重なる旨味のパンチ力たるや……、予約が後を絶たないわけだ。

デザートの人気メニュー、プリン950円は、熊本・那須ファームの卵を使った、やや硬めのリッチな味わい。

「いつ伺っても、デミグラスソースの鍋を混ぜている。自分の家では絶対に出せない味で、ハンバーグは外で食べるものになりました」

洋食おがた●京都市中京区柳馬場押小路上ル等持寺町32・1 
TEL.075・223・2230 
営業時間:11時30分~13時30分LO、17時30分~21時LO 火曜休、ほか月2回不定休あり

【祇園四条】洋食の店 みしな  

昼のフライ定食3,800円から、エビフライとカニクリームコロッケ。パン粉はいまも、パンを濾して作っている。

祇園で愛され、育てられた西洋料理仕込みの花街洋食。

細かな衣に包まれ、ピンと伸びたエビフライ。その美しさも、初代が洋食の黎明期を支えた東京の名店で修業を積んだと聞けば、得心する。

祇園に店を構えたのは、1948(昭和23)年。西洋料理仕込みの端正な姿と上品な味、〝フライの後にさっぱりと〞と考案した〆のお茶漬けなどは、多くの文化人や芸舞妓を虜にしたという。

昭和の末に閉店するも、惜しむ声が後を絶たず、平成に二寧坂で再開。現在は、3代目が初代からの製法を変えることなく、花街の洋食を伝えている。

「子どもの頃に訪れ、自家製のきめ細かいパン粉を使った揚げ物の軽さに感激。それから真似をしています。昼の〆のお茶漬けも魅力です」

洋食の店 みしな ●京都市東山区桝屋町357 
TEL.075・551・5561
営業時間:昼12時~、13時30分~の2部制、17時~19時30分LO 水曜、第1・3木曜休 要予約。

松田美智子

松田美智子 さん (まつだ・みちこ)

料理研究家

東京・恵比寿で料理教室を主宰。本誌「くらしの歳時記」ほか雑誌連載、著書多数。近著に『65歳からの食事革命』(文化出版局)。月に1回は京都を訪れている。

『クロワッサン』1113号より

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