くらし

洗いだれに割烹スタイルなど、京都らしさが味わえる焼き肉3。

旨い店がごまんとある街だからこそ知りたい、食道楽のグラフィックデザイナー・サノワタルさんが、京都でその店に通う理由。
  • 撮影・青木和義 文・齋藤優子

京都らしさが味わえる焼き肉。

“肉好き京都人の奥義をカウンターで”

京都は街の大きさに対して、飲食店の数が半端ない。中でも肉! もともと多いのですが、最近は牛カツなど牛肉の専門店が増えている気がします。京都の肉もたくさん使っていますし、近江牛を出しているところも多い。

僕自身、夜遅くごはんを食べるとなると、必ず焼き肉がチョイスに入ってきます。実は、昔ながらの京都人は大の焼き肉好きで、“洗いだれ”や割烹スタイルなど、独特の文化を生み出してきました。

カウンターで楽しめるところが多いのも特徴なので、ひとりでも訪れやすいと思います。近年、京都でも流行りつつある薪焼きも、少人数で使える店ができてオススメです。

【岡崎】牛(ぎゅう)おおた

ハラミ2,400円のたれ焼き。洗いだれは、焼いた後、ゴマと青ネギが入った和ダシのたれに通し、あっさりと食べる趣向。

多彩な薬味で〝京都流“が楽しめる人気焼き肉店。

ハラミはたれ焼きにして〝洗いだれ〞で、ヘレ(ヒレ肉)は塩にして、ポン酢と大根おろしで。そんな京都流の焼き肉が享受できる国産和牛専門の焼き肉店だ。創業は1979年。

ポン酢と大根おろしで味わう、上バラ(三角バラ)の焼きしゃぶ3,500円は、肉がふわっとろっ。これでハーフサイズ!

ヘレからホルモンまで質の高い肉を揃え、京都で焼き肉と言えばその名があがる人気店に。現在は2代目の太田聡さんが味を受け継ぐ。おまかせは、肉の脂とたれの味をすっきりさせる〝洗いだれ〞をはじめ、山わさび、大徳寺納豆の醤油漬けなど、部位ごとに出される多彩な薬味が楽しい。

臭みひとつない、新鮮なセンマイ刺し1,200円は食感も見事。

「おまかせにすると、ヘレでもハラミでも1枚からいろいろ頼めるのがいい。スープや煮込みなど、肉だけでなく一品料理もすべておいしい」

牛おおた●京都市左京区浄土寺真如町164・9 
TEL.075・751・7888 
営業時間:17時~23時 月曜休

【京都駅】五燠堂(ごおうどう)

信州和牛 内もも3,500円。薪焼きの魅力を堪能できるという信州和牛の赤身を30分かけて焼く。薪で炊いた沖縄の海塩で。

薪焼きの肉が少人数でも味わえる薪火酒場。

カウンターの向こう、薪火でチロチロと燻されている肉に飲食(おんじき)欲を刺激される。

薪焼きローストビーフといちごの朝どれサラダ1,100円。豆乳ドレッシングで。

開店前、薪焼き店を30軒以上回ったという奥良太マネージャーは、「単品でリーズナブルに楽しめる店にしたかった」と、あえて酒場に。水分を含んだ薪ならではの、中がしっとり外が香ばしくスモーキーに仕上がる肉類は、200gから注文可能。自社農園で採れる野菜の焼き物から薪焼きトマトのサワーなどドリンク類まで、オープン3カ月足らずながらメニューの幅を広げている。

九条ネギと猪肉の焼きしゃぶ2,000円。猪は、京都府北部の綾部から。

「薪焼き料理は、大人数じゃないと楽しめない店が多いですが、ここは少人数でもOK。荒々しい、燻した肉の味と香りがたまりません」

五燠堂●京都市南区東九条西山王町8・1 
TEL.075・691・5009 
営業時間:17時~23時(料理22時LO) 木曜休

【祇園四条】祇園 肉割烹 安参(やっさん)

創業以来、たれを継ぎ足して作り続けている名物のテール煮込み3,080円。超濃厚なコクにたっぷりのネギと芥子が合う。

立地も店構えも接客も料理も、まるっと祇園が感じられる老舗。

法被スタイルの白衣に下駄にハチマキ。4代目の榊原善史さんは、和食の料理人のような出で立ちで板場に立つ。ここは、初代がテール煮込みという名物を創り、2代目が割烹スタイルの店に押し上げて、多くのアカデミアに愛された1948(昭和23)年創業の牛肉割烹だ。

サーロインの表面を炙って貝割れを巻いた焼き物3,850円。

タン刺しなど刺身3品から始まり、焼き物、煮物と、味の濃いものに続いていく流れ。メニューはなく少し不安になるが、そこは祇園の老舗。こなれた客あしらいで、気後れせずに楽しませてくれる。

2代目が割烹スタイルにした時に始めたという刺身。写真はタン刺し1,650円。 とろっとした食感の、程よく脂がまわったタンは、やっぱりネギと芥子で。

「家族で営んでいて、立地も、店構えも、客あしらいも含めて、祇園らしさが味わえる店。ここのテール煮込みは京都でいちばん好きです」

祇園 肉割烹 安参●京都市東山区祇園町北側347 
TEL.075・541・9666 
営業時間:18時~22時30分 日曜、祝日休

サノワタル

サノワタル さん (さの・わたる)

グラフィックデザイナー

大阪府出身。京都市在住。人生の半分以上を京都で過ごす。自身のデザイン会社では、グラフィックデザインを軸に、菓子のパッケージなど、京都の飲食関係のデザインも多く手がける。

『クロワッサン』1113号より

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