くらし

鏡リュウジさんに角田光代さんが聞く。 星の動きで見る2024年の運勢は?

2024年はどんな年になる?
どういった行動が幸福につながる?
角田光代さんが30年来のつきあいになる鏡リュウジさんに聞いた。
  • 撮影・黒川ひろみ 文・長谷川未緒 イラストレーション・松栄舞子
左・占星術研究家、翻訳家 鏡リュウジさん 右・小説家 角田光代さん

お互い20代のころ、角田光代さんが鏡リュウジさんのトークイベントを観覧したことがきっかけで知り合った2人。家が近く、2人ともお酒が好きということで、飲み仲間になったという。

角田 星占いを読むと、思い当たることがあるじゃないですか。それがおもしろくて、昔から好きなんです。鏡さんにプライベートで占ってもらったことはありませんが、以前、雑誌の企画で鑑定してもらいましたよね。

鏡 ありましたね。2004年でした。

角田 この先どうなるのか占ってもらったところ、〝今年から来年にかけてふたつ大きな出来事があるだろう〟と。ひとつは個人的なことで、もうひとつは大きな周りのこと、と言われ……。
その年に母親が亡くなり、年が明けて直木賞を受賞しました。あのとき思ったのは、星が教えてくれることは、いいこと・悪いことじゃないんだな、と。
母の死と直木賞受賞はどちらもインパクトが大きくて。でも、結局悲しみの中にも得るものがあったり、喜びの中にも何か耐えていかなければならないことがあったり、運って混在しているのかなぁと考えました。

鏡 僕の好きな言葉に、心理学者の河合隼雄さんがおっしゃった「ふたつよいことさてないものよ」があります。ひとつの物事には、よいこととそうでないことの両面があるという意味で、占いも同じです。
吉凶は方便みたいなもので、実際にはいいことばかりでも悪いことばかりでもない。角田さんもそう感じてくださったんですね。まぁ、具体的なことは何も言っていないから、占星術に懐疑的な方には偶然だろうと言われそうですが(笑)。

角田 いえいえ、時期がぴったりでしたし、ぞわぞわしましたよ。

角田さんと鏡さんには、魚座という共通項も。2024年の運勢は?

 魚座には土星が入っているんです。これまで目を向けてこなかった現実に直面させられるので、プレッシャーがかかることも多いんじゃないかな。僕は母親が亡くなったので、親戚付き合いって大変だなとか、この年齢になって初めて社会人っぽいことをしていますけど、角田さんはどうですか。

角田 私は仕事のやり方を変えようと思っているんです。
『源氏物語』の翻訳に5年かかり、終わったら小説の書き方を忘れ、小説観も変わりました。それでもずっと前から決まっていた連載を昨年、一昨年と書き、すごくつらかった。もう私は書けないんだと思い、2カ月くらい前に、2026年まで入っていた連載の仕事をすべてお断りしたんです。
でもそこで、小説が書けないんじゃなくて、書きたいことしか書きたくないんだ、と気づいて……。だから、時間がかかるかもしれないけれど、書いてから持ち込もうと決めたんです。大きな変化なんですけれど、魚座に土星が入っているからなんでしょうか。

鏡 それもあるし、年齢的なことも影響していますよね。僕も、20年、30年と一緒に仕事をしてきた人たちがそろそろ定年が近づき、次のフェーズに移っていくのを見て、どうにかしないといけないと思ってはいるんですけれど、なかなか動けない。角田さんは自分の意志で変えられて、偉い! 
クロワッサン読者も世代的に僕と同じように変化の影響を受けているならば、角田さんのように自分で変えるのと、周りの変化に適応するのと、両方の視点を持っているといいのかな、と思います。

変化の大きな年になる星回りなんですね。

あちこちで戦争が起き、気候の変動も激しく、これからどうなるのか……。2024年も、この不安をひきずって暮らすことになるのかな、と角田さん。

 そうですね、いい材料がないんですよ。占星術界では2026年に多くの星がトラインというちょっといい配置になってくるので、その頃には好転するのではといわれています。でもここ10年くらいかな、ドナルド・トランプがアメリカ大統領になったあたりから、占星術師たちの予想をはるかに超える出来事が起きているので、どうなるかわかりませんが……。

角田 しばらくはこの状態が続きそうなんですね。

 星回り的にはそう言えますね……。2024年は4月に木星と天王星が牡牛座でコンジャンクション(接近)します。木星は拡大と発展、天王星は改革と革新がキーワードなので、科学技術の発展につながるのではと考えられます。
もうひとつ大きな星の動きは冥王星の移動で、山羊座と水瓶座の境界線を行ったり来たりしながら、11月に完全に水瓶座に入る。冥王星は死と再生の星で、その星座の意味が根底から見直されたり、刷新されたりします。
水瓶座が象徴するのはテクノロジー。ChatGPTみたいなものがわーっと出てくるかもしれないですし、最新技術を活用するうえで人間にしかできないことは何だろうとか、そんなことが注目されるのではないでしょうか。

角田 自動運転みたいに、人間の代わりになる技術が次々と実現しそうですね。新しいテクノロジーが始まるときって、いろいろな問題も起きるし、怖さもあります。

鏡 僕もそうです。

角田 でも、このあいだ久しぶりに海外に行ったら、コロナ前とは旅行の仕方が違い、スマホがあれば何でもできちゃう。昔は人に道を聞いて、会話が生まれてコーヒーをご馳走になったりしておもしろかったけれど、スマホのおかげで道に迷うこともなくて、ちょっとつまらないな、と。一方、翻訳アプリを使ったら、腰が抜けそうになるくらいきれいに翻訳できて、もう魔法のようでした。だから、怖いとかつまらないとか思わず、いいほうに目を向けたらいいのかもしれませんね。

鏡 さっきも言った「ふたつよいことさてないものよ」ですよね。どんなことにも吉凶の両面があるから、変化を恐れるよりも、便利さを享受すればいい。いつの時代も新しいものは楽しんだほうがいいけれど、2024年以降、ますますそうなっていくと思います。

急ぎ足はやめて、人生を味わいましょう。

最後に、2024年上半期の占星術的ラッキー行動を聞いた。

鏡 拡大と発展を司る木星が、5月まで牡牛座に入っています。大きな流れとしてはテクノロジーの発展があるわけですが、牡牛座はリアリティーを大切にする星座なので、五感を使った体験や、本物志向が開運になります。
たとえば、おいしいものを食べたり、長く使えるいいものを買ったり、人生の醍醐味を味わおうとするといい。自分の体を使って身につく習いごとなどを始めるのもいいと思います。牡牛座は時間をかけて何かを得ていく、そういう星座なので。

角田 タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉は捨てたほうがいいですね。

鏡 そうそう! 動画を倍速で見るとか、時間を節約しようというスタンスは運を落とすと思う。

角田 たしかに、早送りとか早食いとか、何かが逃げていく感じがします。

鏡 みんななんでも急いでやろうとするけれど、2024年上半期は、ゆっくり行動することが幸運の鍵ですね。

角田光代

角田光代 さん (かくた・みつよ)

小説家

2005年『対岸の彼女』で直木賞、’21年、現代語訳した『源氏物語』で読売文学賞など、受賞作や著書多数。近著に『ゆうべの食卓』『明日も一日きみを見てる』など。

鏡リュウジ

鏡リュウジ さん (かがみ・りゅうじ)

占星術研究家、翻訳家

京都府生まれ。10代よりさまざまなメディアで活躍。英国占星術協会会員。『鏡リュウジの占星術の教科書』シリーズ、『タロットの秘密』など著書多数。

『クロワッサン』1108号より

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