くらし

パン屋『ダンディゾン』オーナー、引田ターセンさん・かおりさんに聞く「本当においしいパン」への想い。

  • 撮影・小川朋央 文・小沢緑子

吉祥寺にパン屋をオープンして20年。「本当においしいパン」への想いとは?

キャベツ、じゃがいもなどを野菜だしでさっと煮たスープをパンと一緒に。「塩こしょうやマスタードでの味の調整は、盛り付けてから各自でします」(かおりさん)

「私はパンはこんがり焼き目をつけるのが好きなんですが、夫のターセンは口の中が痛くなるからって(笑)、軽く焼く程度が好み。その都度キッチンを行ったり来たりするのは大変なので、食卓にカセットコンロを置いて、焼き網で好きな焼き加減にする方法にたどりつきました」と、引田かおりさん。

パンのお供。左から、多田自然農場のチーズジャム、藤井養蜂場のはちみつ。「右の季節のジャムは、 保存食作りをする、たくまたまえさん http://takuma tamae.com によるもの」。

今日の昼食のパンは、ふたりで経営するパン屋『ダンディゾン』の全粒粉100%のカンパーニュ。

「これうまいんです」とターセンさんが太鼓判を押すと、「偶然、私と1字違いで、北海道産のキタノカオリという大好きな小麦100%で作ったパンです。香りがすごくよくて本当においしいの」とかおりさんも笑顔。

左はよつ葉バター。 右のカマンベールチーズは、「岡山の吉田牧場(インスタグラム:@yoshida_dairy_farm)の商品。作家の松林誠さんがパッケージに絵を描いていて、贈っていただいたのをきっかけに取り寄せています」

IT企業のビジネスマンだったターセンさんの早期退職をきっかけに、「自分の住む吉祥寺に、どこにもないおいしく美しいパン屋を作りたい」と二人三脚で理想の店を作ってから20年。

「パンを焼くスタッフが小麦農家さんに研修旅行に行ったり、ほかにも時間も手間も惜しまない生産者さんと顔が見えるお付き合いをしているので、パンを食べるときは自然と素材のおいしさを噛み締めていますね」(かおりさん)

愛情をたっぷり注いで丁寧に作られたものを食べたい。

パンは昼か夜に食べる。「夫婦ふたりなのでシンプルにスープかサラダを合わせることが多いです。ターセンお得意のミネストローネもおいしい」(かおりさん)、「野菜だけでなく、タコも入れたりね」(ターセンさん)、「夜はそこにワインも加わる感じです」(かおりさん)。

取り寄せ上手なかおりさん。パンのお供もいろいろ楽しんでいるが、中でも引田家の定番となっているのは仕事を通して出合った作り手のもの。

香ばしい香り、噛み締めた瞬間のおいしさを 楽しんでいます。

「私は特別食いしん坊ではないけれど、ひとつ自慢できるのが“愛情を注いでおいしいものを作る人や作られたものを引き寄せる力”があること。健康を支えるのは食事。今、食べているものが10年後の自分を作るので、丁寧に作られたものを食べたいし、それを楽しめるのが何より幸せだと思っています」

引田ターセン・かおり

引田ターセン・かおり さん (ひきた・たーせん、かおり)

「ダンディゾン」「ギャラリーフェブ」オーナー

東京・吉祥寺でパン屋とギャラリーを営む。多分野の作り手と交流し、"おいしいと素敵"を提案。共著に『しあわせのつくり方』。かおりさんの新刊は『SCRAPBOOK』。

『クロワッサン』1087号より

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