近年は年齢的に記憶力が落ちたし、手がけたことのない噺も少なくなりましたし、覚えたものをよりよく完成度を高めたい、などの理由からネタおろしは年に数席だけです。ま、いちばん大きいのは記憶力の低下、でも長年の経験のたまもので“忘れたときの対応力”はスキルアップしています。
今回は「祇園会」というネタを初演しました。この噺は途中で江戸ッ子が祭囃子の笛や太鼓の音色を口でスピーディーかつリズミカルにまくし立てる部分があり、ここは一語一句正確に言い立てなくてはなりません。ところが当日の私は緊張であちこち忘れたり間違えたり……。けれどお客さまにはそんなことは感じさせず、何事もなかったかのように演じ続けて楽しい落語日和をご提供。内心自分のずうずうしさにあきれてましたよ。