くらし

夏ならではのお楽しみ、“住吉踊り”をご紹介。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

夏の寄席、昔から風物詩といえば“怪談噺”です。暑い日が続く中、怖い話でゾクッと背筋に涼風を感じるような一夜をご提供しようと、先人達も工夫を凝らしてきました。

けれど今回ご紹介するのは怪談ではありません。もうひとつ、夏の寄席といえばという名物が、毎年八月中席(11~20日)に浅草演芸ホールでおこなわれる「住吉踊(すみよしおど)り」です。故・古今亭志ん朝(2001年没)師匠が、古くから寄席に伝わる小粋で楽しい踊りの数々が絶えてしまわないようにと、大変に詳しく芸達者な八代目・雷門助六師匠に指導を仰ぎ、大勢の芸人がお稽古をするようになったのです。

昼の部のトリの落語が終わったあとの大喜利として披露される住吉踊り(ちなみに“大喜利”とは座布団の増減を競う意味ではなく、トリの一席のあとの“おまけ”の芸を指す言葉です)。「伊勢音頭」という出演者全員の総踊りで幕を開け、「深川」「奴さん」「かっぽれ」などお馴染みの踊りからふだんはあまり披露されない踊りまでを、笑いもふんだんに折り込んで披露されます。

志ん朝師匠亡きあとも、現在は古今亭志ん彌師匠を座長としてベテランから若手が、所属する団体や芸種の垣根を越えて継承しています。

私は前座時代、毎年楽屋のお手伝いをおおせつかり、志ん朝師匠から「住吉の太鼓はお前に任せると安心だよ」とお言葉をいただいたのが、噺家生活のなかで数少ない誇りとなっています。

住吉踊りを楽しんでいただくと、落語日和にいっそう彩りが加わりますよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は公式サイトにて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』1026号より

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