パックン 少子化対策についてはどう考えます? モチベーションを高めるために、3人以上産むお母さんは減税にするとか、経済的な動機付けを導入するのはどうですか。
平野 子どもを育てるのは負担が大きいから、それはいいと思います。ただ、僕は国のために「産め」というのは反対。子どもができない人もいるし、そもそも個人が決めることだし。だから、なんとなく「子どもを持ってもいいかな」という気持ちになるような環境を作っていかないといけない。少子化対策は、中長期的に個人がある程度自由になるお金と時間を持てない限り解決できないと思います。今みたいに薄給だと、いざデートでおいしい店に行きたくても、お金も暇もない。それでは恋愛も結婚もできないですから。
パックン 同性婚もなかなか認められませんね。若い世代に同性婚許容派が多いから、安倍首相も憲法を変えたいなら、同性婚を認めればいいのに。
平野 彼のコアな支持層では、家父長的な家族制度が重要なトピックで、同性婚を認めたら日本の家庭制度が崩壊するって本気で言っているんですよ。選択的夫婦別姓だって、別姓を名乗りたい人が名乗ればいいと言っているだけなのに。とにかく過干渉です。女性が「パンプスだと足が痛いからスニーカーを履きたい」という「#KuToo」運動だって、何の靴を履こうと人の勝手。なのに一部の男性が「俺だって革靴を履いている」とか「ネクタイ締めている」とか言いだすんです。
パックン その人たちだって革靴やネクタイをやめる選択肢はあるでしょ。
平野 そうですよ、なのに自分の人生にフラストレーションを抱えていて、とにかく何でもいいから攻撃したい。誰かが権利を回復したいと言いだすと、その人たちが得をして、相対的に自分が損すると思っているんです。
パックン 「Win-Lose」で「Win-Win」で考えられないんですね。そうなった原因は何だと思います?
平野 いくつかのレイヤーがあると思います。長いスパンだと、旧陸軍的な、戦中の全体主義が、学校教育で残り続けていたということ。同じ上履きじゃないと認めないとか。そういうタイムスケールで起きていることの一方で、最近では国の財政が逼迫していることも要因でしょう。たとえば予算を生活保護に使うと、「怠け者に金を払うのはもったいない」と、社会的なリソースの使い途にものすごく過敏になっている。みんなが苦労する中で、ちょっとでも他人が裕福になったり自由になったりすることが、相対的に自分を不幸にする気がするんじゃないですか。
パックン 特に中年以上の世代は、激動の数十年を生きてきたせいかも。インターネットが生まれ、SNSが出てきて。外からの刺激が増える中、経済的な不安も重なって、理性や論理ではない、もっと深い本能的なところで、異物を排除する免疫機能が働いているのかもしれませんね。