くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】自分の歩んできた道が失敗だったと思えて虚しいです。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は仕事も育児も一生懸命こなしてきたにも関わらず、そのあまりの報われなさに自分を支えられなくなっている方からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

いつも読ませてもらっています。中学生と小学生の子がいるワーキングマザーです。
正社員の一般職として時短勤務で働いて来ましたが、最近、自分の選択した道が損な役回りばかりだったと思えてなりません。
時短勤務のため家事育児の全般は私がやり、ほぼワンオペで10数年以上頑張ってきました。仕事量をフルタイムの同僚より多くふられても、早く上がるために業務改善を積極的に行い、昼休みも返上して努力し、家に帰っては休む間も無く家事育児に追われて疲労困憊の毎日でしたが、自分なりに頑張ってきました。
しかし、昇格ではフルタイムの後輩に抜かれて、勤続期間が長いからか総合職の仕事もかなりふられているのに昇給など微々たるもので、家でも自分ばかりが家事育児をこなし、報われないと思えることばかりです。また、最近では会社の制度も未就学児のいる家庭には手厚く見直されたり、幼保無償化も始まりましたが、子供が大きくなったためそれらの恩恵は受けられません。
一般職、共働き、時短勤務は自分で選んだ道ですが、そのどれもが失敗だったように思えてなんだかとても虚しいです。ひがみっぽくて情けないですが、心の持ちようを教えて下さい。

(それでもがんばる/女性/ 40代2児の母)

山田ルイ53世さんの回答

「自分の選択した道が損な役回りばかりだったと思えてなりません」と落ち込んでいる、“それでもがんばる”さん。
ここで、「いや、いつか全てが報われる日が!」、「しっかり貴方の身になっていますよ!」などと並べ立ててみたところで、相談者は納得されないでしょう。
皮肉なことですが、それは、その名の通り貴方が“頑張ってきた”からに他なりません。

“売れっ子”期間が「時短勤務」だった一発屋の筆者にも、「何で自分ばかりが……」、「割に合わんなー」という思いをした経験はそれなりにあります。
世の中、特に芸能界には、何事も上手く立ち回ったり、不思議と運が良い人が数多く存在し、そういう人達を見るにつけ、
「くそっ……それに比べて俺は……」
と惨めな気分になることも少なくありませんでした。

ただこの“人と比べる”というのは厄介で、人生のコストパフォーマンスを非常に悪くします。
他人と比較して、
「くそっ、俺だって!」
と奮起するのは、若者の特権。
中年世代のモチベーション、残りの人生を走破するためのガソリンとしては、燃費が宜しいとは言えない。
若い頃と比べ残り時間に余裕がないため、そこに割く時間や気力の“勿体なさ”が相対的に増すからです。
40代の我々には、もはや贅沢なのだと悟りましょう。
当面、ご自分に関係のないことは、徹底的にミュート(消音)するのがお勧めです。
肝心なのは己、自分に集中することなのだと繰り返し心の中で唱えましょう。

誰それと比べて失敗したということは、他の誰かに比べれば成功しているのかもしれない。
失敗と成功は裏表……“クラインの壺”のようなものです。
要は見方によって変わる、その程度のこと。
大体、キリがない。
かつての牛丼価格競争と同じく、
「他社より安く!もっと安く!」
と気張ったところで、結局最後はジリ貧。
人生にとって意味のあるデータは、つまるところ、“当社比”しかありません。

それでも、相談者がご自身の半生を“失敗”、“選択ミス”と断じるなら、きっとそうなのでしょう。
かくいう筆者とて、自分の選んだ道が正しかったか、成功だったかとあらためて向き合えば、失敗だったと後悔していることのほうが圧倒的に多い。
手前味噌で申し訳ないですが、拙著『一発屋芸人の不本意な日常』の帯には、
「全ては“なりたい自分”になれず、“自分らしく”生きることが出来なかった、『終わった人間』の世迷言」
と書きました。
本心です。
裏を返せば、「なれた自分でやっていく」ということ。
失敗した、要領が悪かった、それで良いのではないでしょうか。

ただ、1つ。
旦那さんには、文句を言っても良いでしょう。
「10数年に及ぶワンオペ」、これは洒落になりません。
どのような事情があるにせよ、彼がもっと育児・家事を分担してくれていれば……これは言ってみれば、旦那さんに対する“貸し”。
今後、じっくり取り立ててみるのも良いでしょう。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
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