くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】子育てにも人付き合いにも疲れて毎日死にたいです。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は理想の母親像と現実のギャップに悩むお母さんからの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
毎日心の中で死にたいと思い、周りに人がいなければ声に出して呟いています。行動に移す気はありませんが、とにかく子どもの世話、そして気の合わない義理家族(別居ですが)や同僚との付き合いが面倒で面倒で放りだして一人静かに海の底に沈みたいです。朝は子どもの荷物準備、着替え、体温計測、髪をとき、歯磨きを済ませたら、パン(と時々果物)を保育園までの車の中でかじらせて、もうそれで精一杯です。旦那は私より早く起きて自分でご飯を食べて私を起こして会社に行きます。一事が万事こんな調子で、理想の母親像とはかけ離れ、死にたい自分を、どうやり過ごしていけばいいでしょうか。

(ささかま/女性/メーカーで時短勤務の30代の会社員、共働きで2歳の子供がいます)

山田ルイ53世さんの回答

行動に移す気はないとは仰っていますが、「毎日心の中で死にたいと思い、周りに人がいなければ声に出して呟いています」とは穏やかではない。
「もうそれで精一杯」、「一事が万事こんな調子で、理想の母親像とはかけ離れ」ていると、何かご自分を責めておられるようですが、どうでしょうか。
2歳の子供など、まあ、目が離せないもの。
(テレビの台の角に頭をブツけないだろうか……)
(熱いと知らずに暖房器具に手をベタッとやらないだろうか……)
階段やベッドなど、大人にとっては何て事の無い段差も、子供にとっては東尋坊。
とにかく、四六時中ヒヤヒヤさせられ、見守っているだけで此方もヘトヘトになります。

相談者は、「朝は子どもの荷物準備、着替え、体温計測、髪をとき、歯磨きを済ませたら、パン(と時々果物)を保育園までの車の中でかじらせて」、その後、出勤と十分、いや、完璧にこなしておられる。
いや、頭が下がります。
「精一杯」なのは、家事に子育てに仕事にと、実際に「精一杯」取り組んでいるからではないでしょうか。
決して、何かが“足りない”、“至らない”という話ではないかと。

そもそも、「理想の母親像」などありません。
そんな銅像は、どこを探しても建っていない。
其々のママに、其々のやり方があるだけのこと。
モデルルームがお洒落で綺麗なのは、そこに誰も住んでいないからです。
世に溢れている(ように見える)「素敵」は、あくまで展示品、エンターテインメントだということをご理解下さい。
惑わされるのは止めましょう。

最後に、1つだけ。
「周りに人がいなければ声に出して呟いています」というのはよろしくない。
せめて、旦那さんやご両親の前で口にしましょう。
とにかく、全てを相談者一人で抱え込み過ぎている気がするのです。
幸い、「私より早く起きて自分でご飯を食べて私を起こして会社に行く」という旦那さんは協力的な方のような気がします。
もっと思い切って、諸々分担して頂いても良いのではないでしょうか。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
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