くらし

思わぬところでの番組談議に困惑……。│しまおまほ「マイリトルラジオ」

週末に息子が通う保育園のバザーがあった。父母が店員となってリサイクル品を売るイベントで、わたしは呼び込み係。店の外に立ち看板片手に大声を張り上げた。

「いらっしゃいませー! 安いですよ!」

すると、向こうから若い女性が。さらにわたしは必死の形相。

「GUの未使用品もありますよ!」

女性はわたしの前で足を止めた。

「あの……、ラジオでよく聴く声ですけど、もしかして……」

しまった。あまり気づかれたくない場面でのラジオリスナーとの遭遇。税理士事務所の電話受付に続き、2回目。急に声が小さくなる。

「お恥ずかしい……。息子が通ってる保育園のバザーで……」

「シマオさん、最近もラジオよく聴いていますか? 〇〇(番組名)はどう思います?」

なるほど。この女性、ラジオの話がしたいらしい。

「結構好きですよ。最初は慣れなかったけど。でも、報道が減ったのは物足りないですね……」

「わたしもそう思ってます! じゃあ、△△は聴いてますか?」

思わず長々と立ち話。ひとしきり話したところで、女性は

「スッキリしました! 身近にリスナーいなかったので」

と帰ろうとした。わたしは思わず、

「あ! バザー寄ってってください」

と言うと女性はニコリと笑い、とりあえず、といった感じに会場に向かってくれた。

せっかく楽しくラジオ談議したのに最後に商売っ気を出したこと、今になって反省している。

しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。

『クロワッサン』1011号より

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