登場人物ふたりの名前のように花の芳しい香りがするような、音程の正確な歌を聴いているような心地よい感覚に包まれる。
「中国語は一つ一つの単語を作る文字に意味があります。なので、日本語で書くときも言葉の持つ意味に敏感になると言えるのかも」
作中、キーアイテムとして漢詩がたびたび登場することも印象に残る。台湾の人はこのように日常的に漢詩を詠むのですか?
「いいえ。でも大学で中国文学を専攻するには詩作の授業が必修です。それには教養として古典詩の知識が必要ですし、現在も漢詩の文学賞があります。その意味で比較的身近な存在ではあります」
また、中国語圏では、エッセイ文学が小説同様の高い地位を得ているとのこと。伝統的に「叙情を重んじる文化があるのだと思う」。