くらし

【紫原明子のお悩み相談】人と親しくなれません。悲しくて寂しくて涙が出るときもあります。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は会話ベタに悩む30代の女性からの相談です。

<お悩み>
明子さん初めまして。 明子さんの素敵な言葉に惹かれて投稿しました。
私は昔から人と親しくなれずずっと悩んでいます。友人もほとんどいません。
人見知りで会話下手なので話が盛り上がらず、次に繋ぐ事が出来ません。話すのが苦手なので聞き上手を目指そうとしましたがそれも難しいです。
いつも笑顔を心掛け、感じよく接しているつもりですが「話しかけにくい」と過去に何度か言われた事があり、何をどうしていいかわかりません。 数人で話していても大体私だけ話しかけられなくて連絡先も聞かれず私以外で盛り上がっているのを辛い気持ちで見ています。
悲しくて寂しくて涙が出るときもあります。 こんな私に良きアドバイスをお願いします。
(相談者:マシュマロ/女性/会社の事務をしている独身30代の契約社員です。)

紫原明子さんの回答

マシュマロさん、こんにちは。
人とおしゃべりするのが得意ではないんですね。大丈夫、泣かないでください。マシュマロさんは運悪くこれまでずっと、言葉の通じない場所にいただけなんです。いやいや、言葉の通じる場所にいました、とおっしゃるでしょうか。

しかし日本語が話せるからといって、日本のどこにいっても言葉が通じるかというと、決してそうではありません。日本語といっても、その実、使われている場所によっていろいろな種類があるのです。

私は数年前、Netflixで初めて「テラスハウス」を観たとき、このことに気が付きました。というのも「テラスハウス」に登場する若者たちは、私が一つ一つは理解できる言葉を組み合わせて、トータルではほとんど理解できない文章を作って、それを交換して、相互理解し合っていたのです。大きな驚きでした。
最初のうち、たくさんの言葉が発せられているのに、彼らがどんな内容を伝えようとしているのかまったくピンと来ず混乱しました。しかし一話、また一話と懲りずに見守り続けていると、不思議なことに、だんだん彼らの言わんとすることがわかってきたのです。そして1つのシーズンが終わる頃にはついに、登場する女性陣が素敵だなと感じる男性陣の魅力に共感できるレベルにまでなりました。今なら、私がテラスハウスのメンバーになったって立派に登場人物としての役割を全うできるだろうと感じました。

しかし一方で、それは私がテラスハウスの透明人間として、若者の生活を長らく覗き見し続けていたから可能となったことです。時間をかけて観察し続けることで、彼らが重視している空気、人を評価する際のポイントといった彼ら独自の文化が、徐々に私の中に浸透していったからにほかなりません。

現実には、人はコミュニティの中で透明人間にはなれません。だから、ある閉鎖的な世界の中の様子を、相手にさとられずじっくり観察し続けるなんてことはできません。むしろ、いつだっていきなり実践です。相手は当然のように、言ってることわかるよねって顔をして、よくわからない言葉を使ってきます。するとやはりよく分からないので、ピントのずれた受け応えをすることになる。そうしたらやっぱり、相手もこちらの言葉が理解できません。

そんな感じで、おそらくマシュマロさんはこれまで、たまたま運悪く、自分と違う文化を持ち、違う言葉を話す人たちのコミュニティにばかり巡り合ってきてしまったのではないでしょうか。そういうことはよくあるのです。私も、独身時代、福岡に住んでいた頃は、ずっと人間関係の難しさに頭を悩ませてきました。しかし子どもを産んだり、東京に越してきたりして、身を置くコミュニティが変わったことで、人付き合いの楽しさを初めて知りました。

ですからどうか自分を責めないでください。自分に悪いところがあるのだという根拠のない後ろめたさを持つ必要はありません。誰かが悪いなんてことはなく、お互いに話す言葉が違うだけです。これから先、自分と同じ言葉を話す人達の集まる場所を見つけていけばいいのです。

幸いにも今は、昔に比べてとても手軽にそれができる時代です。色んな人が、色んな居場所を開放しています。お住まいの地域によっては少し遠出をする必要があるかもしれませんが、何せこれは、まだ見ぬ新大陸を目指すマシュマロさんの大冒険なので、多少は投資も必要と割り切ってください。勇者が馬を買う気持ちで、電車やバス、ときには飛行機に乗って空を飛んだりして、遠くの新しい土地を目指しましょう。

ちなみにこのとき、何をおいても持っていくべき装備は「好きなこと」「趣味」です。好きなことや趣味というのは、もともとは別の文化を持つ人達同士の共通言語になるもの。あるととても便利なのです。もしなければ、無理やり作りましょう。たとえば一人の作家の作品をすべて読んでみるとか、近くで今やっている美術展に全部行ってみるとか、囲碁や将棋、刺繍を始めてみるとか。そういうことでもいいと思います。やっていて苦にならないこと(できれば軽く性的に興奮するくらいのことが見つかるとベストなのですが)をひとつ選んで、そこをできるだけ深堀りする。その上でインターネットを使って、同じものが好きな人と、その集まりを探してみる。すぐに会ったりするのに躊躇があれば、最初はネットで軽く言葉を交わしてみて、大丈夫そうなら実際の集まりに顔を出してみる。そんな感じで、同じ土台の上で出会った人とは、普段より言葉が通じる確率が高くなると思うんです。

もちろん、同じものが好きな人同士でも、その熱量には個人差があります。またコミュニティの雰囲気というのはそのときその場にいる人の個性や調和、ともすれば場所や気温といった細かな条件でも大きく変わるものです。ですから共通言語をもって挑んだとしても、必ずしもうまくいくとは限りません。それもやっぱり運です。マシュマロさんは何も悪くないので、さっさと気持ちを切り替え、次の冒険を見据えましょう。

世の中は広いので、きっとマシュマロさんが、今のまま何も変わらず楽しくいられる場所があるはずです。大事なことは、見つかるまで決して絶望しないことです。どうか私を信じて、新しい冒険に繰り出してみてくださいね。

紫原明子さんへのお悩み相談はこちらから!

イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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