「見て。この葉っぱが散っている感じも美しいでしょう」
畑から届いたばかりという秋の草花が、平井かずみさんの手によってガラスの花器の中で息を吹き返す。花器の周りに落ちた葉まで手に取って慈しむ平井さん。自然の景色をそのまま持ち帰ってきたように草花をしつらう平井さんのフラワーアレンジメントに難しいルールや決まりごとはない。大事にしていることはただひとつ。草花との対話だ。
「まず、花の名前を知る。そして、その花が自然の中でどう育ち、生きてきたのかを見て、知る。そうすれば、自ずと花との向き合い方が見えてきます」
人とのつき合い方と一緒かもしれないですね、と平井さん。
春になるとミモザやタンポポなどの黄色い花が道のわきから顔を出し、梅雨が来ればくもり空が似合うブルーのアジサイが咲く。夏は暑い太陽に負けじと真っ赤なカンナやヒャクニチソウが見られ、秋はトーンが落ちてススキが風に吹かれる姿に見惚れる。マツやヒイラギの濃い緑色は冬空に生える。
「草花をよく観察していると、季節や環境にぴったりと合う色や形で生きていることが分かります。ありのままの瑞々しい姿を覚えておき、花を活けます」
答えはすべて景色の中にある。
目が留まるところに季節の花を添えよう。上質な化粧品で優しく肌を労るように、日常に花を取り入れることで、心は潤い、シャンとした生き方が始まる。