口腔ケアの概念を覆そうとしている口腔内フローラについて、歯科医師に聞きました。
撮影・森山祐子 イラストレーション・川野郁代 文・高橋顕子
歯を磨きにくい人、自分で ケアできない人にも。
しかし、だれもが完璧なセルフケアをできるわけではない。
「私の姉は身体障がい者。骨形成不全症と象牙質形成不全症も伴っているから、どんなにケアをしてもすぐに歯の病気にかかってしまうんです」
姉の歯の病気を治したい一心で歯科医師になったという二川さん。
「障がい者施設や精神科で治療をすると、完治したはずの患者さんがすぐにまた悪くなってしまう。セルフケア以外の方法で口腔環境を整える方法を模索し始めました」
そこで行きついたのが、プロバイオティクスによって口腔内フローラをコントロールする方法だ。
「プロバイオティクスとは、自然由来の善玉菌を摂取することによって、悪玉菌を減らし、善玉菌を優勢の状態にすること。これをだれもが日常的に行っている『食べること』で実現できれば、セルフケアが難しい人も口腔環境が整えられる」
十数年の研究を経て発見した善玉菌が「ラクトバチルス・ラムノーザスKO3株(L8020乳酸菌)」だ。一度もむし歯や歯周病にかかったことがない子どもの口の中から発見した菌で、ヒト由来だから害がない。また、乳酸菌だから食品とも親和性が高い。
「L8020乳酸菌は、歯周病菌やむし歯菌、カンジダ菌に対して抗菌性があります。さらに、歯周病菌の細胞壁を構成する『LPS(リポポリサッカライド)』という内毒素を不活性化させる作用もあるんです」
歯周病菌が除菌されても、なお口腔内に残る性質を持つLPS。歯茎に炎症があれば、LPSが毛細血管を通って全身に運ばれ、全身疾患を引き起こす原因となってしまう。
「LPSを不活性化させられる乳酸菌はほかにはありません」
現在、タブレットやチョコレート、ヨーグルトなどのおやつに応用されているL8020乳酸菌。今後はグミやビスケット、ふりかけなどさまざまな食品へと展開する可能性もあるという。
「新しい乳酸菌が、口腔ケアのハードルを下げ、だれもが歯の健康、身体の健康を無理なく手に入れられるようになればと思っています」
L8020乳酸菌の歯周病菌、むし歯菌への抑制作用を実証。
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