唾液の質を高めるために。日常、積極的に取り入れたい6つの習慣。
イラストレーション・大庫真理 文・板倉みきこ
【質を高める】日常、積極的に取り入れたい6つの習慣。
起床後、まず歯と舌を磨く。
食後の歯磨き以外にプラスしてほしいのは起床後。就寝中は唾液の分泌量が減り、口腔内の細菌数は増加。そのまま朝食を食べては、細菌を飲み込んでしまうのと同じ。厚くなった舌苔も舌磨きで優しく取り去ろう。
「舌ブラシも売っていますが、道具が増えると習慣化しづらいなら、柔らかい歯ブラシで歯磨きの流れのまま、ブラッシングするだけでも充分。こすりすぎると舌が傷つくので注意して」
日中こまめに胸を開いて姿勢改善。
唾液の分泌に深い関係がある自律神経。交感神経が優位な緊張時は、外部から侵入する細菌を撃退するネバネバ唾液が出て、副交感神経が優位なリラックス時に、口腔内を洗浄する殺菌力のあるサラサラ唾液が出る。
「日中、常に緊張状態だと口が乾き、悪玉菌が増えやすい環境になります。前屈みの姿勢を続けていると筋肉も過緊張になるので、こまめに胸を開いて深呼吸し、リラックスしましょう」
唾液を増やしてから食事をする。
食前に口の中を唾液でいっぱいにするのを習慣にすることで、咀嚼がスムーズにできるようになり、消化・吸収力も改善する。
「なかなか唾液が出ない人は、食前にベロ回しエクササイズをするのもおすすめ。唾液のおかげでしっかり噛め、飲み込めるようになります。また食べ物を美味しく感じることもできるのです。食後もベロ回しエクササイズをすれば、口腔内の殺菌ができ、pHバランスが整います」
睡眠時の無意識の口呼吸を防ぐ。
口呼吸のクセがある人は、口腔内が乾燥しやすく、悪玉菌優勢な“汚口”になりやすい。
「意識しないと自然に口が開いてしまう人は、口の周りを構成する筋肉の発達が不充分かもしれません。口呼吸は百害あって一利なし。ベロ回しエクササイズで筋肉を鍛え、口を閉じる鼻呼吸を習慣にして。また、就寝時は筋肉が緩み、口が開きがちなので、市販のグッズの力を借りて口呼吸を封印するのも手」
効果的な善玉菌を取り入れる。
唾液中の抗菌物質濃度を高める効果が認められている乳酸菌の中でも、虫歯菌の抑制に有効な“L8020菌”、口腔内の善玉菌を補給し、抗炎症、抗菌作用があって歯周病菌に効果的な“ロイテリ菌”は、坂本さんも患者に推奨している。「ヨーグルトなど、様々な関連商品が発売されていますが、ゆっくり溶け、口腔内に有効な乳酸菌を浸透させられるタブレットを就寝前に口にするといいのでは」
腸内細菌のバランスを整える。
腸と口腔内は相関関係にある。腸内環境が整えば身体の免疫力が向上するので、唾液の質も上がる。唾液の質が上がれば口腔内での殺菌力が向上し、腸への悪玉菌の流入を防げるのだ。
「食物繊維や発酵食品など、腸が喜ぶ食べ物をバランスよく摂りましょう。また、過剰な糖質、特に砂糖は腸内細菌叢の悪玉菌を増やすといわれていますが、口腔内にも悪影響。細菌の餌となり、むし歯を増やします」
坂本紗有見(さかもと・さゆみ)さん●銀座並木通りさゆみ矯正歯科デンタルクリニック81院長。日本美口協会代表理事ほか。著書に『歯周病、口臭、むし歯を防ぐ 1分間「殺菌ベロ回し」』(アスコム)がある。
『クロワッサン』1016号より