からだ

血圧を管理することが、心疾患を防ぐ基本です。

将来の心不全発症を抑えるために、欠かせないのが血圧コントロール。誰でもどこでもできる血圧改善法を紹介。
  • 撮影・青木和義 文・及川夕子
日野原記念クリニック所長の久代登志男さん

「高血圧が20年以上も続けば、心臓は疲れ切ってしまい、心不全を起こす可能性があります。実際に、心不全を起こす人の8割は高血圧患者だといわれています。でも、このことはあまり認識されていませんね」と、医師の久代登志男さん。心不全の予防は今、世界中で大きなテーマになっているという。

「血圧が高いとよくないことは、皆さんもわかっているはず。ですが、高血圧は自覚症状がないために、治療を受けている人は半分以下。そのうち、基準値(収縮期血圧140mmHg/拡張期血圧90mmHg)未満にコントロールできている人はさらに半分以下というのが現状。このままでは、心不全患者が急増すると危惧されています」

高齢になってからでは遅く、40代から予防を心がけ、高血圧を医師から指摘されたら治療を受けることが肝心。久代さんが挙げる血圧対策は、まず家庭での血圧測定を欠かさないことだ。
「仮面高血圧といって、健康診断では高くなくても、家庭では高血圧という人がいます。夜は飲酒、入浴などの影響で血圧が変動しやすいので、できれば毎朝、食事前に計測を
家で測る際は、上が135mmHg、下が85mmHg以上が高血圧の目安。背もたれのある椅子に座り、両足を床に、背を椅子につけて血圧を2回計測し、平均値を目安にするとよいそうだ。

セルフケアでは、減塩、肥満解消などが有効。「体重を1kg落とすことで、血圧は1・7〜2下がるという研究報告もあります」と久代さん。

1日約10分、週3回、タオルを握るだけで降圧効果。

高くなった血圧を下げるタオルグリップ法。フェイスタオルを3回たたんで正方形に近い形にし、棒状に巻く。指同士がくっつかない程度に握り、「2分軽く握り1分休む」を、左右手を替えて2回ずつ繰り返す。週3回行う。

また、久代さんが勧めるのが、カナダの医師が考案し、米国心臓協会でも血圧改善の補完療法として認めている、ハンドグリップ法だ。これを、手軽にアレンジしたのがタオルグリップ法。
タオルを握る・ゆるめる動作を繰り返すだけ。簡単にできるうえ、上の血圧は平均で10〜13、下の血圧は6〜8mmHg下がると報告されています。前腕には多くの動脈があるため、筋肉運動で血流を変化させることで血圧改善効果が得られるのです」

上記の手順で1日約10分、週3回を目安に4週間続けると、効果が期待できるという。やり過ぎは逆効果になるので注意を。また、やめてしまうと2週間程度で元の血圧に戻ってしまう。タオルグリップ法は、降圧薬治療を受けている人にもプラスの効果がある。ただし、上の血圧が180、下が110以上の人や、心臓病にかかっている人は、まず治療を受けることや、主治医に相談してから始めるように。

「ところで、高血圧の薬は一生必要なのですか?とよく聞かれますが、加齢による血圧上昇は、普通に生活しているだけでも続きます。一生1種類の降圧薬で血圧コントロールができる人は3割程度。2種類以上の降圧薬が必要な人も多いことを認識しておいてください。現在使われている降圧薬は長年使われている薬で、重篤な副作用はありません。薬でいい血圧を維持できるなら、むしろラッキーなことと、前向きに捉えましょう。タオルグリップ法や減塩も、一生続けていくという意識で取り組むことが大切です」

高血圧は、心臓の予備力を削る大きな要因。健康で楽しい人生を生涯にわたって送るためにも、血圧とうまくつきあっていこう。

久代 登志男(くしろ・としお)●日野原記念クリニック所長。日本大学医学部卒業。専門は循環器学。日本大学医学部教授、同大医学部総合健診センターなどを経て現職。

『クロワッサン』976号より

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